SDGsから自社に合うCSVのテーマを見つけるには?中小企業が考えたい三つの接点
「SDGsとCSVの関係は分かったけれど、結局、自社は何に取り組めばよいのだろう」。Day1を読んで、そう感じた方もいるかもしれません。
17あるSDGsの目標を眺めるだけでは、自社の取り組みは決まりません。大切なのは、お客様や地域の困りごと、自社ができること、事業として続けられることの三つが重なるところを探すことです。
今回は、その重なりを見つけるための考え方を、身近な仕事に置き換えて説明します。
まず、SDGsとCSVの役割を整理しましょう
SDGsは、持続可能な社会に向けた17の目標です。健康、働きがい、住み続けられるまちづくり、つくる責任・つかう責任など、社会の課題に目を向ける手がかりになります。
CSVは、社会の課題に応えることと、事業の価値を生み出すことを結びつける考え方です。SDGsの目標に関係する活動を行えば、自動的にCSVになるわけではありません。
たとえば、地域のために一度だけ無償イベントを開くことにも意味があります。ただ、それだけでは事業として継続する方法が見えないかもしれません。参加者の困りごとを把握し、自社の専門性を生かした継続的なサービスへつなげられるなら、CSVとして考える余地が出てきます。
無償活動を必ず有料サービスに変えるべき、という意味ではありません。活動の目的と費用を確かめ、無理なく続けられる形を考えることが大切です。
接点1:お客様や地域が実際に困っていること
最初に見るのは、SDGsの目標番号ではなく、身近な人の困りごとです。
お客様から何度も聞かれる質問はありませんか。購入後に困っていることはないでしょうか。地域の人が、必要な商品やサービスを利用しにくい場面はないでしょうか。
たとえば、次のような声が手がかりになります。
- 「商品を長く使いたいが、修理を頼める場所が分からない」
- 「親の介護に備えたいが、何から調べればよいか分からない」
- 「少量だけ必要なのに、買える単位が大きすぎる」
- 「サービスの説明が難しく、比較して決められない」
こうした声は、単なる要望に見えても、資源の使い方、健康や暮らし、サービスへのアクセスなど、広い課題につながっている場合があります。
ただし、経営者が「困っているはずだ」と想像するだけで決めないことも重要です。まずはお客様との会話や問い合わせの記録を振り返り、実際の声を確かめましょう。
接点2:自社が得意なこと、すでに行っていること
次に、自社の強みを確認します。新しい設備や大きな予算がなくても、今ある技術、知識、取引先との関係、対応の丁寧さが役立つことがあります。
たとえば、修理が得意な事業者なら、買い替え以外の選択肢を示せます。地域に詳しい事業者なら、高齢のお客様が利用しやすい受け渡し方法を考えられるかもしれません。専門知識を扱う事業者なら、複雑な内容を分かりやすく説明することが価値になります。
ここでの問いは、「世の中の課題を、自社だけでどこまで解決できるか」ではありません。自社の仕事の中で、誰のどの困りごとに応えられるかです。
一人でできる範囲が限られていれば、地域の別の事業者や専門家と協力する方法もあります。ただし、協力先を増やすこと自体を目的にせず、お客様にとって何がよくなるのかを明確にしましょう。
接点3:事業として続けられること
三つ目は、継続できるかどうかです。社会に役立つ取り組みでも、毎回赤字になったり、経営者や従業員に過度な負担がかかったりすれば、続けるのは難しくなります。
次の点を確かめてみてください。
- 必要としている人はいるか
- 提供にかかる時間や費用を把握できるか
- 適切な価格を設定できるか、または既存事業の改善につながるか
- 現在の人員や設備で対応できるか
- 続けるほど品質が下がる仕組みになっていないか
最初から大きな利益を見込む必要はありません。一方で、「社会によいことだから費用は考えない」という状態も避けたいところです。小さく試し、反応と負担を見てから続け方を決めると、判断しやすくなります。
三つの接点を重ねると、テーマが見えてきます
ここで、説明用の仮想ケースを考えてみましょう。
地域の小さな電器店に、「家電が故障したが、修理できるか分からない」という相談が多く寄せられているとします。この店には、製品の状態を確認し、修理や買い替えの選択肢を説明できる強みがあります。
そこで、まず故障の状態を確認し、修理できる場合は費用と期間を伝え、難しい場合は買い替えの理由を説明するサービスを検討します。お客様は納得して選びやすくなり、店は技術と相談対応を生かせます。使える製品を長く使う選択肢にもつながります。
この場合に確かめるべきことは、相談対応にかかる時間、診断料金の設定、修理できる範囲、お客様が実際に求めているかどうかです。これらを確認して初めて、継続できる取り組みか判断できます。
関連するSDGsの目標を調べるのは、取り組みの内容が見えてからでも遅くありません。目標12「つくる責任・つかう責任」などとの関係を考えられますが、目標との関連を示すだけで成果を証明したことにはならない点にも注意しましょう。
同業他社との違いは「何を大切にして、どう行うか」に表れます
同じ業種でも、お客様のどの困りごとに注目するか、どの強みを使うかによって、取り組みは変わります。
先ほどの電器店なら、「修理も受け付けます」という案内だけでなく、「状態を確認したうえで、修理と買い替えそれぞれの費用や使い続けられる見込みを説明します」と伝えるほうが、サービスの違いが分かります。
差別化は、SDGsの目標を多く掲げることではありません。お客様が判断に使える具体的な情報を示し、約束した対応を積み重ねることから生まれます。できないことや対象外となる条件も伝えると、期待のずれを減らせます。
今日できること:自社のCSV候補を一つ書き出す
紙やメモに、次の四つを書いてみてください。
- 困りごと:お客様や地域の人が、実際に困っていることは何か
- 自社の強み:今ある仕事、技術、知識で何ができるか
- 続ける条件:費用、時間、人手、価格について何を確かめる必要があるか
- 小さな試し方:まず誰に、どの範囲で提供して反応を見るか
一度で立派な計画を作る必要はありません。候補を一つ選び、お客様の声と自社の負担を確認するところまで進めば、十分な第一歩です。
まとめ
- SDGsは課題を考える手がかりであり、CSVは社会への価値と事業への価値を結びつける考え方です。
- 自社に合うテーマは、「実際の困りごと」「自社の強み」「続けられる条件」の重なりから探します。
- 小さく試して、お客様の反応と費用・時間の負担を確かめることが大切です。
- 同業他社との違いは、具体的な対応と、その伝え方に表れます。
よくある質問
SDGsの17目標から、先に一つ選ぶ必要はありますか?
必要はありません。まずお客様や地域の困りごとと、自社ができることを確認しましょう。その後、取り組みに関連する目標を調べるほうが、実態に合った説明になります。
社会の課題に役立っていても、利益が出なければCSVとは呼べませんか?
一回の取り組みだけで利益が出るかどうかを判断する必要はありません。ただし、CSVとして事業に組み込むなら、社会への価値に加えて、自社にどのような事業上の価値が生まれ、どう続けられるかを考えることが重要です。
人手の少ない会社や個人事業主は、何から始めればよいですか?
既存の仕事で繰り返し寄せられる相談を一つ選んでください。新しい活動を増やす前に、説明方法や提供方法を少し変えることで困りごとに応えられないかを考えると、負担を抑えて試せます。
取り組みを発信するとき、SDGsの目標名を書けば十分ですか?
目標名だけでは、何をしているのか伝わりにくいでしょう。「誰に」「何を」「どの範囲で」提供しているかを先に説明し、必要に応じて関連する目標を添えてください。
次回予告
Day3では、取り組みの候補を具体的な事業の形に置き換えます。小さな会社や個人事業主を想定した仮想ケースを使い、続く取り組みと続きにくい取り組みの違いを考えます。
記事・相談担当者:井浪(いなみ):Amazon/Kindle 著者ページ









