ブログ2025.11.15
統計で読み解く投資対効果|欠勤・離職・生産性に効くKPI設計とROI試算(中小企業向け)
統計で読み解く投資対効果|欠勤・離職・生産性に効くKPI設計とROI試算(中小企業向け)
「効いているのか?」を腹落ちさせるために、測り方と計算の作法を整えます。
Day3では、POSをてこにした健康経営のKPI定義、データ収集の最小設計、算出式、感度分析(ベスト/ワースト)まで、すぐ使えるテンプレとしてまとめました。
数値は例示であり、御社の実績に置き換えてご利用ください。
1. 指標設計の考え方:ロジックモデル(Input→Impact)
| 層 | 例 | 測り方(最低限) |
|---|---|---|
| Input | 1on1トレーニング、EAP契約、再検査フォロー | 支出額、対象人数 |
| Activity | 1on1実施、EAP相談、再検査予約 | 実施率、利用率 |
| Output | 上司アクション履行、受診完了 | 履行率、完了率 |
| Outcome | 欠勤減、離職率低下、POS上昇 | 欠勤率、離職率、POS平均 |
| Impact | 業績・生産性に寄与 | 粗利/人、労務費当たり売上など |
Outcomeまでは四半期で検証、Impactは半期〜年次で確認が現実的です。
2. KPIの定義:欠勤・離職・生産性・POS
2-1. 欠勤(Absenteeism)
- 欠勤率(%)= 欠勤日数合計 ÷(在籍人数 × 稼働日数) × 100
- 欠勤コスト= 欠勤日数合計 ×(1人1日あたり労務費)
- 遅刻・早退は別指標に分けると原因分析が容易。
2-2. 離職(Turnover)
- 離職率(%)= 期間中の離職者数 ÷ 期首在籍者数 × 100
- 離職コスト(概算)= 採用費+オンボーディング費+立ち上がり損失(年収の20〜50%を代理値として感度分析)
2-3. 生産性(Presenteeism/Output Proxy)
- プレゼンティーズム損失(概算)=(自己評価の低下率)×(労務費)
- 人あたり粗利= 粗利 ÷ FTE(常勤換算)
2-4. POSスコア(簡易版)
- 4設問×5件法の平均(Day2で提示)。平均+分布で確認。
- 実務では「下位25%の改善」を狙うと費用対効果が立ちやすい。
3. データ収集の最小設計:粒度・匿名化・頻度
粒度
- 月次:欠勤、EAP利用、1on1実施
- 四半期:離職、POSサーベイ
- 半期:人あたり粗利
匿名化
- 5名未満の集計は公開しない(再識別の防止)
- 健康情報は目的限定・最小化
品質
- 欠勤の定義を年初に固定(私用/病欠の扱い)
- 欠損値は「0」ではなく「NA」で管理
サンプルCSV(コピペ用)
month,headcount,workdays,absent_days,turnover,oneonone_done,eap_sessions,pos_avg,labour_cost_yen,gross_profit_yen
2025-01,50,20,32,0,45,3,3.4,25000000,42000000
2025-02,50,19,28,0,46,4,3.5,25000000,41000000
2025-03,50,22,36,1,44,5,3.6,25000000,45000000
POSは1〜5の平均。労務費=人件費+法定福利費(概算)。
4. 計算式まとめ:そのまま使える式&Excel例
| 目的 | 式 | Excel例 |
|---|---|---|
| 欠勤率 | = 欠勤日数合計 / (在籍人数 * 稼働日数) | =C2/(A2*B2) |
| 欠勤コスト | = 欠勤日数合計 * (年間労務費 / 稼働日数合計) | =C2*(I2/(A2*B2)) |
| 離職率 | = 離職者数 / 期首在籍 | =D2/A2 |
| 離職コスト(代理) | = 離職者数 * 年収 * 代理比率(0.2〜0.5) | =D2*(I年収セル)*0.3 |
| 人あたり粗利 | = 粗利 / 在籍人数 | =J2/A2 |
| ROI | =(削減コスト合計 − 施策コスト) / 施策コスト | =(欠勤削減+離職削減+生産性寄与-施策費)/施策費 |
代理比率は感度分析のパラメータ。1つの「正解値」に固定しないのがコツです。
5. ROI試算のケーススタディ(50名企業・例示)
以下はサンプルです。自社の実績に置き換えてください。
前提(例示)
- 在籍:50名、稼働日数:240日/年
- 平均年収(総コスト):600万円 → 1日あたり労務費 ≈ 25,000円
- 施策:1on1トレーニング20万円+EAP @500円/人・月(年間30万円)= 計50万円
- ベースライン:欠勤3.0日/人、離職率12%
- 施策後:欠勤2.2日/人、離職率10%(仮定)
効果の算定(例示)
- 欠勤削減:0.8日 × 50人 = 40日 → 40 × 25,000円 = 100万円
- 離職削減:2% × 50人 = 1人分。代替コスト比率20%なら 600万×0.2=120万円
- (任意)生産性寄与:労務費の0.5%改善で 50人×600万×0.005=150万円
| 項目 | 金額(円) | 備考 |
|---|---|---|
| 欠勤コスト削減 | 1,000,000 | 40日×25,000円 |
| 離職コスト削減(保守) | 1,200,000 | 年収×20% |
| 生産性寄与(任意) | 1,500,000 | 0.5%改善の仮定 |
| 効果合計(保守) | 2,200,000 | 生産性寄与を除外 |
| 施策コスト | 500,000 | 1on1+EAP |
| ROI(保守) | 2.4 | (2,200,000−500,000)/500,000 |
感度分析(離職コスト比率の違い)
| 代替コスト比率 | 離職削減額 | ROI(保守:欠勤+離職−施策費) |
|---|---|---|
| 20% | 1,200,000 | 2.4 |
| 35% | 2,100,000 | 4.2 |
| 50% | 3,000,000 | 6.0 |
数値は例示です。業界・職種により大きく変動します。実績データで再計算してください。
6. 可視化と意思決定:しきい値&アラート設計
- ダッシュボード(四半期):①欠勤率 ②離職率 ③POS平均+分布 ④1on1実施率 ⑤上司アクション履行率
- しきい値:POS下位25%のチームに対し、翌月の1on1頻度を週1に引き上げる。
- アラート:欠勤率が前四半期比+20%なら、EAP周知と工数再配分を即時実施。
- 検証:施策導入の群と未導入の群で差分を見る(できればロールアウト時期をずらす)。
7. 実装チェックリスト
- 定義表(欠勤/離職/プレゼンティーズム/POS)を社内Wikiに公開した
- 月次CSVの項目を統一し、欠損はNAで管理している
- 離職コストの代理比率(20/35/50%)で感度分析シートを作った
- ダッシュボードに「下位25%」のアクションルールを設定した
- 半期ごとにROIを更新し、経営会議で意思決定に接続している
9. FAQ
Q1:プレゼンティーズムの“自己評価”は主観的すぎませんか?
A:主観値はノイズがある一方、低コストで早期指標として使えます。月次は主観、半期は人あたり粗利で二重化し、傾向一致を確認します。
Q2:小規模でデータがばらつきます。
A:四半期の移動平均を使い、下位25%に集中介入すると誤検知を抑えられます。
Q3:離職コストはどの比率が妥当?
A:役割・採用難易度で変動します。20%/35%/50%の3水準で感度分析し、意思決定は保守値で行うのが無難です。
10. 参考・補足
- Day1/Day2の定義・テンプレを併用してください(POSサーベイ4設問)。
- 外部資料は社内版に合わせて定義を固定し、年度内は変更しないのが原則です。
記事・相談担当者:井浪(いなみ):Amazon/Kindle 著者ページ
PICK UPピックアップ情報
RANKINGランキング
Contact
私たちは、今日も笑顔で
お客様とのご縁をつなぎます。
ご質問やご相談など、
お気軽にお問い合わせ下さい。
電話でのお問い合わせ
0586-85-5138[受付時間]9:00〜17:00(平日)









