1. 中小企業がサイバーリスクと上手につき合うための「これから1年の行動計画」

ブログ2025.11.27

中小企業がサイバーリスクと上手につき合うための「これから1年の行動計画」

中小企業がサイバーリスクと上手につき合うための「これから1年の行動計画」





中小企業がサイバーリスクと上手につき合うための「これから1年の行動計画」







中小企業がサイバーリスクと上手につき合うための「これから1年の行動計画」





はじめに(5日間のゴールを、ここで一度「言語化」する)



ここまで4日間、ランサムウェアを中心に
中小企業のサイバーリスクについてご一緒に見てきました。



Day1では、「ランサムウェアとは何か」「なぜ中小企業こそ狙われるのか」。

Day2では、「メール」「リモート接続」「クラウド」という
代表的な入口

Day3では、実際に被害を受けた中小企業の
モデルケース

Day4では、「小さな会社でも無理なく続けられる
7つのステップ」を整理しました。



最終回となるDay5では、



  • このシリーズ全体で押さえたポイントをもう一度整理し

  • 「自社はどこまでできているか」をチェックし

  • これから1年の「現実的な行動計画」に落とし込む



ところまでをゴールにします。



サイバー攻撃はなくせませんが、
「備え方」は変えることができます。

その第一歩として、
今日はぜひ
「自社なりの答え」を一緒に形にしていきましょう。







1. 5日間のふり返り:中小企業が知っておくべき3つの現実



まずは、この5日間で一貫してお伝えしてきた
「3つの現実」を整理します。



現実1:「ランサムウェアは、大企業だけの問題ではない」



被害にあっているのは、大手企業だけではありません。

中小企業も、全体の中で大きな割合を占めています。



「うちは狙われるほどの会社ではない」という考え方は、
攻撃者側から見ると
「守りが甘い会社」と同じ意味
になってしまいます。



現実2:「入口が多いほど狙われやすく、止まったときの影響は会社の規模に比例しない」



メール、リモート接続、クラウド…。

便利な仕組みが増えるほど、
「外からの入口」も増えます。



被害額そのものは大企業の方が大きいかもしれませんが、
中小企業は
「数日止まる=資金繰りや信頼への打撃が大きい」
という違いがあります。



現実3:「人のうっかり+仕組みの弱点」が重なると、一気に被害が広がる



多くの事例で、



  • 人のうっかり(メールを開く/パスワードを使い回す)

  • 仕組みの弱点(古いVPN/更新されていないソフト/バックアップ不十分)



が重なったときに、被害が大きくなっています。



逆に言えば、
どちらか片方でも対策できれば、被害の広がりを抑えられる
ということです。

このシリーズでは、



  • 人:メール・パスワード・社内ルール・防災訓練

  • 仕組み:入口の棚卸し・アップデート・バックアップ



の両面から考えてきました。





2. 自社チェックリスト10問:今どこに立っているかを見える化



ここからは、
「自社は今どこまでできているか」
ざっくり把握するためのチェックリストです。



すべて「はい/いいえ」でOKです。

「はい」が多ければ多いほど、すでに対策が進んでいると言えます。



ランサムウェア・サイバー防災チェックリスト(10問)



  1. 【入口】メール・リモート接続・クラウドなどの
    「入口の棚卸し」を一度でも実施したことがある。

  2. 【やめること】ここ半年使っていないシステムやアカウントを、
    停止・解約したり、入口を閉じたことがある。

  3. 【メール】「初めての相手+添付ファイル」「至急メール」など
    怪しいメールの特徴を、社内で共有している。

  4. 【パスワード】会社名や誕生日を避けるなど、
    パスワードの最低ルールを決めている。

  5. 【アップデート】Windowsや業務ソフトなどの更新について、
    誰が・いつ確認するかが決まっている。

  6. 【ウイルス対策】会社で使うパソコンには
    全てウイルス対策ソフトを入れており、期限切れがない状態になっている。

  7. 【バックアップ】「何を・どこに・どの頻度で」バックアップするか、
    紙やファイルに明文化されている。

  8. 【暫定運用】システムが止まったときの
    暫定的な受付方法や連絡フローをメモレベルでも用意している。

  9. 【外部パートナー】IT会社やベンダーに、
    「うちのランサムウェアリスクで気になるところ」を一度聞いたことがある。

  10. 【防災訓練】年1回程度でも、
    「もしシステムが止まったら?」という想定で話し合ったことがある。



結果の見方(ざっくり版)



  • 「はい」が0〜3個:

    これからしっかり整えていける伸びしろが大きい状態です。

    まずは「入口の棚卸し」と「バックアップ」の2つから手をつけると効果的です。

  • 「はい」が4〜7個:

    すでに部分的な対策が進んでいます。

    ばらばらにやってきた対策を
    「社内ルール」と「見える化シート」でまとめると、さらに強くなります。

  • 「はい」が8〜10個:

    中小企業としてはかなりしっかりした対策レベルです。

    年1回の見直しと訓練を続けることで、
    「続ける仕組み」にしていきましょう。



大切なのは、点数ではなく
「次に何をするかが見えたかどうか」
です。

気になった項目に〇をつけておき、
後ほど「1年の行動計画」に落としていきます。





3. 社内でどう話題にするか:経営会議・現場ミーティングの進め方



サイバーリスクは、社長だけが知っていても守りきれません。

一方で、現場任せにしても進みにくいテーマです。



そこで、
「経営側」と「現場側」の両方で話題にする場
を、意識的に作るのがおすすめです。



経営会議で話すなら(30〜60分程度)



  1. Day1〜Day4の要点を、社長や担当者から簡単に共有する

  2. チェックリスト10問を読み上げ、「今どこまでできているか」をざっくり確認


  3. 「この1年で、最低限ここだけは守りたいデータ・仕組み」を決める

    • 例:顧客情報、受発注システム、会計データ など



  4. 外部パートナーに相談したいことを3つだけ選ぶ

  5. 責任者と、おおよそのスケジュール感を決める



現場ミーティングで話すなら(15〜30分程度)



  1. メールの事例や、Day3のケース(工場・クリニック・商社)を簡単に紹介


  2. 「もしうちで同じことが起きたら?」をみんなで考える

    • どこが止まりそうか

    • お客さまや取引先に、どう説明するか



  3. メールの「3つの約束」など、
    現場でできる行動ルールを確認

  4. 「怪しいと思ったら無理に開かなくていい」と、
    経営側からあらためて伝える




ポイントは、
「教える」ではなく「一緒に考える」スタンスです。

攻められるのはシステムですが、
守るのは「人の判断」と「日々の習慣」です。





4. 専門家や外部窓口に相談するときのポイント



ランサムウェアをはじめとしたサイバーリスクは、
自社だけで完璧に対処しようとしないことも大切です。



すでにお付き合いのある



  • システム会社・ITサポート会社

  • クラウドサービスのサポート窓口

  • 顧問の会計事務所・コンサルタント



などがいれば、まずはそこから相談してみるのがおすすめです。



相談前に整理しておくと良いこと



  • どんな業務を、どのシステムやクラウドで行っているか(ざっくりでOK)

  • 「これだけは止まってほしくない」業務やデータ

  • サイバー被害が出たときに、一番困りそうな相手(取引先・患者さん・顧客など)



相談するときの聞き方の例



  • 「うちのような規模でランサムウェアに備えるなら、まずどこから手をつけるのが現実的ですか?」

  • 「今の契約の範囲で、どこまで対応してもらえますか? 逆に、どこは自社でやる必要がありますか?」

  • 「もし明日、受発注システムが止まったら、御社はどのような流れでサポートしてくれますか?」



こうした質問を通じて、
「頼れるところ」と「自社で決めるところ」
が見えやすくなります。



なお、万が一の被害や不審な事象が起きた場合は、
早めに公的な相談窓口や、専門家への相談も検討してください。

「迷ったけれど、結局何も相談しなかった」よりも、
「早めに相談して、過剰だったとしても一安心できた」
状態の方が、結果的にダメージは小さくすみます。





5. これから1年の「サイバー防災」行動計画サンプル



最後に、このシリーズでお伝えしてきた内容を
「これから1年の行動計画」として整理してみます。



あくまで一例ですが、イメージをつかむためにご覧ください。
自社の状況に合わせて、順番や内容を入れ替えていただいて構いません。



第1〜3か月:現状把握と「危ない入口」を減らす期間



  • 入口の棚卸し(メール/リモート接続/クラウド/外部サービス)

  • 使っていないアカウントやサービスの停止・解約

  • チェックリスト10問を使って、自社の現状を把握

  • 経営会議で、「この1年で最低限守りたいもの」を決める



第4〜6か月:人と仕組みの「基本セット」を整える期間



  • メール対応の3つの約束を社内で共有し、紙1枚のルールにまとめる

  • パスワードの最低ルールを決め、重要システムのパスワードを順次見直す

  • OS・業務ソフトのアップデート方針(自動更新/月1回確認など)を決める

  • ウイルス対策ソフトの導入状況と期限を確認し、抜け漏れをなくす



第7〜9か月:バックアップと暫定運用の準備期間



  • 「何を・どこに・どの頻度で」バックアップするかを決める

  • 実際に復元できるか、テストを1度実施してみる

  • システムが止まったときの暫定運用メモを作成(取引先・患者さんへの説明文例なども用意)

  • 外部パートナーと、被害発生時の対応フローについて一度話し合う



第10〜12か月:社内浸透と「サイバー防災訓練」の実施期間



  • 社内ルールと見える化シートを、最新版に整理して配布

  • 30分〜1時間程度の「机上訓練(もしシステムが止まったら?)」を実施

  • 訓練で見つかった改善点を反映し、来年に向けた見直しポイントをメモ

  • 翌年も「年1回は見直す・訓練する」というサイクルをスケジュールに登録




ここまで読むと、
「1年もかけるのか」と感じられるかもしれません。

しかし実際には、1つ1つの作業は数時間〜半日程度で終わるものがほとんどです。



大切なのは、
「大ごとにせず、小さく分けて進める」こと。

このシリーズが、そのための「地図」として少しでもお役に立てば幸いです。





7. 今日のまとめと、シリーズ全体の完結メッセージ


今日と5日間全体のポイントを3つに絞ると:



  1. ランサムウェアをはじめとしたサイバーリスクは、
    中小企業こそ「入口」と「人」と「仕組み」のバランスで備えることが重要である。

  2. チェックリストや1年計画のように、
    自社なりの優先順位とペースを決めることで、
    無理なく現実的な対策が進められる。

  3. すべてを自社だけで抱え込まず、
    社内での対話と、外部パートナー・専門家との協力を通して、
    「続けられるサイバー防災」を育てていくことが大切である。



5日間のシリーズを通じて、
ランサムウェア対策を



  • 「難しいITの話」から

  • 「自社の大事なものをどう守るか」という経営と現場の話



に少しでも近づけて感じていただけていれば、とてもうれしく思います。



「これで完璧」という状態は、正直なところ存在しません。

ですが、



  • 入口を減らす

  • バックアップを用意する

  • 人のうっかりを前提にしたルールを作る



こうした小さな積み重ねが、
会社とお客さまを守る大きな力になっていきます。



もし、
「自社の場合はどう考えたらいいか」という段階で悩まれている場合は、
この下にある無料相談のご案内も、ぜひ気軽に活用してみてください。





8. まとめ




本記事では、5日間の内容をふり返りながら、中小企業がランサムウェアを含むサイバーリスクと向き合うための「自社チェックリスト」と「これから1年の行動計画」を整理しました。入口・人・仕組みのバランスを意識し、社内の対話と外部パートナーとの協力を通じて、無理なく続けられるサイバー防災体制を作ることがポイントです。



キーポイント箇条書き



  • ランサムウェアは大企業だけの問題ではなく、中小企業の業務停止や信頼低下に直結する

  • チェックリスト10問で、自社の現状と優先順位を見える化できる

  • 経営会議と現場ミーティングの両方で話題にし、「一緒に考える」姿勢が重要

  • 専門家や外部パートナーには、「何を任せて何を自社で決めるか」を意識して相談する

  • 1年単位の行動計画に落とし込み、小さなステップを積み重ねることで、無理なく対策を進められる





9. FAQ(よくある質問)



Q1. どこまでできていれば「ひとまず安心」と言えるのでしょうか?



絶対のラインはありませんが、
ひとつの目安としては、

「入口の棚卸し」「バックアップの方針」「メール・パスワードの最低ルール」の3つが
形になっていれば、

「まったく手つかず」の状態からは大きく前進していると言えます。

そのうえで、年1回の見直しや訓練を続けることで、徐々に安心感を高めていくイメージです。



Q2. すでに一度対策をしたつもりですが、それでもこのチェックリストをやる意味はありますか?



はい、あります。サイバー環境は変化が早いため、
「過去にやった対策」が今も有効かどうかを見直すことが大切です。

チェックリスト10問に改めて向き合うことで、
「前はできていたが今は形骸化している部分」や、
「逆に、思ったより進んでいた部分」が見えてきます。



Q3. ここまで読んでも具体的なイメージが湧かないのですが、どうしたらよいでしょうか?



その場合は、
「自社の業務フロー」と「守りたいデータ」を紙に書き出すところから始めてみてください。

それでも難しいと感じる場合は、
外部の専門家や公的窓口に「自社の状況メモ」を見せながら相談するのがおすすめです。

下の無料相談をご活用いただき、
「自社の場合はどう考えるか」を一緒に整理するという使い方も歓迎です。







記事・相談担当者:井浪(いなみ):

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