中小企業がSDGsを手がかりにCSVを考えるには?身近な仕事から始める第一歩
「SDGsには関心があるけれど、自分の事業とどう結びつくのか分からない」「社会に役立つことをしたいが、費用や手間ばかり増えるのは困る」。中小企業の経営者や個人事業主なら、そう感じることもあると思います。
そこで考える手がかりになるのが、CSVです。CSVとは、社会や地域の課題に役立つことと、事業の価値を高めることを一緒に考える発想です。SDGsを「どんな課題があるかを見つける地図」として使うと、自社の仕事から取り組めることを探しやすくなります。
この5日間のシリーズでは、SDGsとCSVの関係を整理し、小さな事業でも続けられる取り組み方、同業他社との違いの伝え方まで考えていきます。
SDGsとCSVは、どうつながるのでしょうか
SDGsは、2030年に向けて国連が掲げた17の目標です。健康、働きがい、まちづくり、資源の使い方など、さまざまな課題を示しています。
一方、CSVは「共通価値の創造」と訳されます。社会にとっての価値と、事業にとっての価値をともに生み出す考え方です。
たとえば、地域の高齢者が買い物に行きにくいという課題に対して、商店が無理のない範囲で配達方法を工夫するとします。利用者の困りごとが軽くなり、お店も継続的に利用してもらえるなら、社会への貢献と事業の成長がつながります。これは考え方を説明するための例であり、すべての配達サービスが利益を生むという意味ではありません。
SDGsで課題に目を向け、CSVで「自社の仕事を通じて、その課題と事業の双方にどんな価値を生めるか」を考える。この順番にすると、取り組みを具体化しやすくなります。
「17の目標から選ぶ」前に、身近な困りごとを見る
SDGsを考えるとき、最初から17の目標をすべて調べて、自社に当てはまる番号を探したくなるかもしれません。しかし、日々の仕事から考え始めたほうが、続けられる取り組みを見つけやすいでしょう。
まずは次の三つを振り返ってみてください。
- お客様から繰り返し聞く困りごとは何か
- 従業員や取引先が、仕事の中で負担に感じていることは何か
- 自社の仕事で、資源の無駄や地域の不便を減らせるところはないか
たとえば、修理業なら「買い替える前に相談できる」、飲食店なら「食材の使い方を見直す」、専門サービス業なら「難しい情報をお客様が理解できる形で伝える」といった方向が考えられます。実際に取り組む際は、お客様の需要、提供にかかる費用、現場の負担を確かめることが大切です。
社会に役立つ活動を、どうすれば持続可能にできるでしょうか
よい取り組みでも、事業者だけが負担を抱え続ける形では長続きしません。CSVを考える際には、次の二つを並べて確認します。
- 相手にとっての価値:誰の、どんな困りごとが軽くなるか
- 自社にとっての価値:選ばれる理由、継続利用、仕事の効率などにどうつながるか
「社会によいことだから」と無理をして無料で提供する必要はありません。適切な価格を設定し、サービスの範囲を明確にして、品質を保ちながら続けることも大切です。
また、既に行っている仕事の中に価値が隠れている場合もあります。お客様に合わせた丁寧な説明、修理して長く使える商品、働く人が続けやすい業務の工夫。まずは、それらが誰の役に立ち、自社の強みにどうつながっているかを言葉にしてみましょう。
同業他社との差別化にもつながりますか
つながる可能性はあります。ただし、SDGsに取り組んでいると掲げるだけでは、お客様には違いが伝わりにくいでしょう。
違いが伝わるのは、「誰の、どんな困りごとに、どのような方法で応えているか」が具体的なときです。たとえば「環境に配慮しています」よりも、「修理できる部品を確認し、使い続ける選択肢も説明します」のほうが、お客様はサービスの内容を想像できます。
発信するときは、実際に行っていることと、その範囲を正確に伝えましょう。目標の名前に事業を合わせるより、仕事の中で生まれている価値を確かめ、必要に応じて関連するSDGsと結びつけるほうが自然です。
今日できること:一つの仕事を二つの視点で見直す
まずは、主力の商品やサービスを一つ選び、次の文を埋めてみてください。
私たちは「____に困っている人」に、「____という方法」で役立っています。それによって相手には「____という変化」が生まれ、自社には「____という価値」が生まれます。
最後の欄がすぐに埋まらなくても大丈夫です。費用をかけずに続けられるか、お客様が必要としているか、自社の強みを生かせるかを確かめるところから始めましょう。
まとめ
- SDGsは、社会や地域の課題を見つめるための手がかりです。
- CSVは、課題の解決と事業の価値を一緒に考える発想です。
- 中小企業や個人事業主は、身近なお客様や日々の仕事から考え始められます。
- 取り組みを続けるには、相手への価値と自社への価値の両方を確かめることが大切です。
よくある質問
SDGsに関連する活動は、すべてCSVになりますか?
いいえ。社会に役立つ活動でも、自社の事業とのつながりや、続けるための仕組みが見えない場合があります。CSVを考えるときは、社会への価値と事業への価値を具体的に確認します。
個人事業主でも取り組めますか?
はい。規模の大きい活動から始める必要はありません。お客様の困りごとに、自分の専門性や既存の仕事でどう応えられるかを考えることが第一歩です。
取り組むSDGsの目標を先に決めるべきですか?
必ずしもそうではありません。まず仕事を通じて向き合っている課題を明確にし、その後で関連する目標を確かめると、形だけの取り組みになりにくくなります。
次回予告
Day2では、SDGsを手がかりにしながら、自社の仕事に合うCSVのテーマを見つける方法を考えます。
記事・相談担当者:井浪(いなみ):Amazon/Kindle 著者ページ









