地震・台風・豪雨が起きたら事業はどうなる?「止まるもの」から考える災害対策
はじめに
災害対策を考えるとき、
「地震対策をしよう」
「台風対策をしよう」
「豪雨への備えをしよう」
と、災害の種類から考えることが多いのではないでしょうか。
もちろん、それぞれの災害に応じた備えは必要です。
しかし、中小企業経営者や個人事業主にとっては、
もう一つ重要な考え方があります。
それは、
「何が止まったら、自分たちの仕事が止まるのか」
から考えることです。
例えば、
地震でも台風でも豪雨でも、
停電が起きれば同じように仕事へ影響が出ることがあります。
道路が通れなくなれば、
従業員が出勤できない、
商品が届かない、
お客様が来店できないといった問題が起こります。
通信が止まれば、
電話もインターネットも使えず、
取引先や従業員との連絡が難しくなることがあります。
つまり、
災害の名前は違っても、
事業が止まる原因には共通するものが多い
のです。
Day4では、
「地震なら何をする」
「台風なら何をする」
と分けて考えるだけではなく、
電気、水、通信、人、物流、設備などが止まったらどうするか
という視点から、災害への備えを整理していきます。
目次
- 災害名より「止まるもの」を考える
- 電気が止まったらどうなる?
- 水が止まったらどうなる?
- 通信が止まったらどうなる?
- 従業員が来られなかったらどうなる?
- 物流や仕入れが止まったらどうなる?
- 設備が使えなくなったらどうなる?
- 一つずつ代替手段を考える
- 優先順位を決めておく
1.災害名より「止まるもの」を考える
地震、台風、豪雨、洪水、土砂災害。
災害にはさまざまな種類があります。
それぞれの危険性を知り、
ハザードマップを確認したり、
建物の安全性を確認したりすることはとても大切です。
ただし、
事業継続という視点では、
災害の種類だけを見ていても十分ではありません。
なぜなら、
どの災害でも結果として同じような問題が起こることがあるからです。
例えば、
- 停電する
- 断水する
- 電話がつながりにくくなる
- インターネットが使えなくなる
- 道路が通行止めになる
- 鉄道が止まる
- 従業員が出勤できなくなる
- 商品や材料が届かなくなる
- 設備が壊れる
- 店舗や事務所が使えなくなる
こうしたことが一つ起きるだけでも、
会社によっては大きな影響が出ます。
そこで、
災害対策を考えるときは、
「○○災害が起きたらどうする?」に加えて、「○○が使えなくなったらどうする?」
と考えてみます。
この考え方をすると、
自社にとって本当に重要なものが見えやすくなります。
2.電気が止まったらどうなる?
まず考えたいのが、停電です。
今の仕事は、
想像以上に電気へ依存しています。
例えば、
- パソコン
- レジ
- 電話機
- インターネット機器
- 照明
- エアコン
- 冷蔵庫や冷凍庫
- 工場設備
- 自動ドア
- 防犯設備
- エレベーター
こうした設備の多くは、
電気がなければ使えません。
例えば飲食店なら、
冷蔵庫や冷凍庫が止まれば、
食材の保存に影響します。
小売店なら、
レジや決済端末が使えなくなるかもしれません。
オフィスなら、
パソコンやインターネットが使えなくなることで、
ほとんどの業務が止まる可能性があります。
工場なら、
一つの設備停止が生産全体の停止につながることもあります。
そこで最初に確認したいのは、
「電気が止まったら、何の仕事ができなくなるか」
です。
いきなり発電機を購入するかどうかを考えるのではなく、
まずは仕事への影響を整理します。
例えば、
- 完全にできなくなる業務
- 一部なら続けられる業務
- 電気がなくてもできる業務
に分けてみます。
そうすると、
本当に電源を確保すべき設備が見えやすくなります。
3.水が止まったらどうなる?
次に、断水について考えてみます。
水は家庭だけでなく、
事業にも大きく関係しています。
飲食店では、
調理や洗浄に水が必要です。
美容室や理容室などでも、
水が使えなければ営業が難しくなります。
工場や製造業では、
製造工程で水を使っている場合があります。
また、
どの事業所でもトイレは必要です。
長時間の断水になれば、
業種に関係なく大きな問題になります。
そこで、
「水が止まったら、何時間まで事業を続けられるか」
を考えてみます。
数時間なら対応できるのか。
一日止まったら営業できないのか。
それとも、
水が止まった時点ですぐに営業停止になるのか。
会社によって答えは違います。
その違いを把握することが、
必要な備えを考える第一歩です。
4.通信が止まったらどうなる?
電話やインターネットは、
今の仕事では欠かせないものになっています。
しかし災害時には、
通信が混雑したり、
一時的に使いにくくなったりする可能性があります。
そこで確認したいのが、
「電話やインターネットが使えないと、何が困るのか」
です。
例えば、
- 従業員の安否確認ができない
- 取引先へ連絡できない
- 顧客からの問い合わせを受けられない
- クラウドサービスへアクセスできない
- オンラインで受注できない
- キャッシュレス決済ができない
- 配送状況を確認できない
などが考えられます。
ここで重要なのは、
連絡方法を一つだけにしないことです。
例えば、
普段は電話だけで連絡しているのであれば、
別の方法でも連絡できるようにしておく。
社内チャット、
メール、
SMSなど、
複数の手段を考えておきます。
また、
重要な電話番号をスマートフォンの中にしか保存していない場合、
端末が使えなくなったときに確認できなくなることもあります。
必要な連絡先については、
別の方法でも確認できる状態にしておく
ことが大切です。
5.従業員が来られなかったらどうなる?
建物や設備が無事でも、
従業員が出勤できなければ営業できない会社があります。
地震で鉄道が止まることもあります。
豪雨や台風で道路が危険になることもあります。
従業員自身は無事でも、
家族の安全確認や子どもの迎えなどで出勤できないこともあります。
だから、
「建物が壊れなければ営業できる」
とは限りません。
ここで確認したいのが、
「何人いれば最低限の仕事を続けられるか」
です。
10人全員がそろわなければ営業できないのか。
5人なら最低限の業務ができるのか。
2人でも顧客対応だけならできるのか。
こうしたことを事前に考えておくと、
災害時の判断がしやすくなります。
また、
大雨や台風の場合には、
「出勤させるかどうか」
という判断そのものが必要になります。
ここで忘れてはいけないのは、
事業を続けることよりも、人の安全を優先すること
です。
危険な状況になってから、
「どうしようか」
と考えるのではなく、
事前に一定の考え方を決めておくことが大切です。
「社長が来られない」も人のリスクの一つ
従業員が来られないだけではありません。
経営者自身が会社へ来られない可能性もあります。
災害発生時に出張しているかもしれません。
道路や鉄道が止まり、
会社へ戻れないかもしれません。
自宅や家族の対応を優先しなければならない状況も考えられます。
そのとき、
「社長が来るまで何も決められない」
という会社になっていないでしょうか。
そこで、
災害時には誰が代理で判断するのかを決めておきます。
例えば、
- 営業を続けるか停止するか
- 従業員を帰宅させるか
- 避難するか
- 取引先へどのように連絡するか
- 重要設備を停止するか
こうした判断を、
社長一人だけに集中させないことも重要です。
「社長がいなくても最低限動ける会社」にしておくことは、立派な災害対策です。
6.物流や仕入れが止まったらどうなる?
自社の建物も設備も従業員も無事。
それでも仕事が止まることがあります。
その一つが、
物流や仕入れの停止です。
例えば、
商品が届かない。
原材料が届かない。
包装資材が届かない。
部品が届かない。
こうしたことで営業や製造が止まる可能性があります。
災害時には、
自社だけでなく、
取引先や配送会社も被災する可能性があります。
道路が通れなければ、
商品そのものが無事でも届きません。
そこで、
次のようなことを確認してみます。
- これがなければ営業できない商品は何か
- これがなければ製造できない材料は何か
- 一社からしか仕入れていないものはないか
- 代わりの仕入先はあるか
- どの程度の在庫があれば数日間しのげるか
すべてを大量に在庫する必要はありません。
ただし、
「これが一つ届かないだけで全部止まる」ものが何か
は知っておく必要があります。
それが分かれば、
代替先を探す、
少し多めに在庫を持つ、
別の方法を考えるといった対策ができます。
7.設備が使えなくなったらどうなる?
事業によっては、
特定の設備が止まるだけで業務全体が停止する場合があります。
例えば、
工場の特定の機械。
飲食店の冷蔵設備。
医療や介護に関わる機器。
店舗のレジや決済端末。
オフィスのサーバー。
このように、
事業の中心になっている設備があります。
そこで確認したいのが、
「この設備が使えなくなったら、代わりはあるか」
です。
別の設備で対応できるのか。
手作業に切り替えられるのか。
他の店舗や拠点で対応できるのか。
修理先の連絡先は分かるのか。
交換部品はすぐに手に入るのか。
こうしたことを考えておきます。
設備が壊れないようにすることも大切ですが、
壊れた場合にどうするかを決めておくこと
も同じくらい大切です。
データが使えなくなったらどうなる?
現代の事業では、
建物や設備と同じくらい重要なのがデータです。
顧客情報。
受注情報。
会計データ。
商品情報。
契約書。
見積書。
従業員情報。
こうした情報が使えなくなれば、
建物が無事でも仕事が続けられないことがあります。
そこで、
「会社のパソコンが使えなくなっても、重要なデータを確認できるか」
を考えてみてください。
バックアップはあるか。
どこに保存されているか。
誰がアクセスできるか。
社外から確認できるか。
バックアップを取っていても、
実際に復元できるかを確認していなければ、
いざというときに困る可能性があります。
データについても、
「保存してあるから安心」ではなく、「必要なときに使えるか」
まで確認しておくことが大切です。
8.一つずつ代替手段を考える
ここまで考えると、
「全部に対策するのは大変だ」
と感じるかもしれません。
その通りです。
すべてのリスクをゼロにすることはできません。
だから大切なのは、
重要なものから一つずつ代わりの方法を考えておくこと
です。
例えば、
電気が止まったらどうする?
インターネットが止まったらどうする?
電話が使えなかったらどうする?
社長が会社へ来られなかったらどうする?
従業員の半分が来られなかったらどうする?
重要な材料が届かなかったらどうする?
店舗が使えなくなったらどうする?
顧客データを確認できなくなったらどうする?
一つずつ考えていきます。
すると、
「代わりの方法があるもの」
と
「今のところ代わりがないもの」
が分かります。
特に注意したいのが、
代わりがないもの
です。
それが、
自社の事業継続にとって大きな弱点になっている可能性があります。
9.優先順位を決めておく
災害が発生すると、
同時にいくつもの問題が起こる可能性があります。
停電。
通信障害。
従業員の安否確認。
店舗の被害。
取引先への連絡。
商品の不足。
これらをすべて同時に解決することはできません。
だから、
「何を先に行うか」
を考えておく必要があります。
基本的には、
まず人の安全を確認します。
経営者。
従業員。
お客様。
その場にいる人たちの安全が最優先です。
そのうえで、
事業への影響が大きいものから順番に確認します。
例えば、
- 人の安全を確保する
- 火災や二次災害の危険がないか確認する
- 従業員の安否を確認する
- 建物や重要設備の状況を確認する
- 重要な業務が続けられるか判断する
- 取引先や顧客への連絡を行う
といった流れを考えておくことができます。
会社によって優先順位は違います。
だからこそ、
自社では何を一番先に守るべきなのか
を事前に話し合っておくことが大切です。
家庭でも「止まるもの」から考えてみる
この考え方は、
会社だけでなく家庭でも使えます。
例えば、
自宅で停電したらどうなるでしょうか。
夜なら照明が使えません。
オール電化住宅なら、
調理や給湯にも影響する可能性があります。
マンションでは、
建物によっては断水やエレベーター停止などの影響が出ることも考えられます。
通信が止まれば、
家族と連絡が取りにくくなることがあります。
道路や鉄道が止まれば、
家族が帰宅できないこともあります。
そこで家庭でも、
- 停電したらどうするか
- 水が止まったらどうするか
- スマートフォンが使えなかったらどうするか
- 家族が帰宅できなかったらどうするか
- 自宅に入れなかったらどこへ行くか
といったことを考えてみます。
会社のBCPと家庭の防災は、
考え方の基本部分ではよく似ています。
「何が使えなくなると困るのか」と「そのとき代わりにどうするのか」を考える。
これが現実的な備えにつながります。
「全部守る」より「これだけは守る」を決める
BCPを考えるとき、
すべての仕事を災害前と同じように続けようとすると、
計画が難しくなります。
大規模災害の直後に、
平常時とまったく同じ営業を続けることが難しいケースもあります。
そこで、
「最低限これだけは続けたい仕事は何か」
を考えます。
例えば、
すべての業務はできなくても、
顧客からの問い合わせ対応だけは続ける。
通常営業はできなくても、
重要な取引先への連絡だけは行う。
全商品は扱えなくても、
重要な商品だけ供給する。
こうした考え方です。
事業を完全に止めないためには、
すべてを守ろうとするより、
本当に重要なものを先に守る
ことが必要になる場合があります。
今日できる「止まったら困るもの」確認
今日、
会社や店舗を見ながら、
次の質問をしてみてください。
「これが使えなくなったら、仕事は止まるだろうか?」
電気はどうでしょうか。
水はどうでしょうか。
インターネットはどうでしょうか。
電話はどうでしょうか。
特定の設備はどうでしょうか。
特定の従業員はどうでしょうか。
特定の仕入先はどうでしょうか。
そして、
特に影響が大きいものを3つだけ挙げてみてください。
その3つについて、
「使えなくなったら代わりにどうするか」
を考えます。
すぐに答えが出なくても構いません。
「これは止まると困る」
と気づくだけでも、
防災対策の優先順位が見えてきます。
まとめ+要約
災害対策は、
地震、台風、豪雨といった災害の種類ごとに考えるだけではありません。
中小企業や個人事業主が事業継続を考えるときには、
「何が止まったら仕事が止まるのか」
という視点がとても重要です。
電気。
水。
通信。
人。
物流。
設備。
データ。
取引先。
こうしたもののうち、
自社では何が止まると大きな影響が出るのかを確認します。
そして次に、
「それが使えなくなった場合、代わりの方法はあるか」
を考えます。
すべてのリスクに同じように備える必要はありません。
大切なのは、
自社にとって影響の大きいものから優先して対策することです。
また、
災害時には事業継続よりも人の安全が優先です。
従業員が危険な状況で無理に出勤しなければならない会社にしない。
社長が不在でも、
最低限の判断ができるようにしておく。
重要な業務が何かを決めておく。
こうした準備もBCPの大切な部分です。
今日まず、
「これが止まったら、うちの仕事は止まる」ものを3つ
挙げてみてください。
その3つが、
自社の災害対策を見直す入口になります。
FAQ
Q1.最初に確認するべきものは何ですか?
まずは、
「これが使えなくなると営業や仕事が続けられない」
というものを3つ挙げてみてください。
例えば、
電気、
インターネット、
特定の設備、
特定の仕入先、
特定の担当者などです。
その3つについて、
代替手段があるか、
どの程度の時間なら止まっても耐えられるかを考えると、
災害対策の優先順位を整理しやすくなります。
Q2.すべての設備やシステムにバックアップが必要ですか?
すべてを同じレベルで対策する必要はありません。
事業への影響が大きいものから優先して考えることが現実的です。
「止まるとすぐ事業停止につながるもの」
と
「数日使えなくても何とかなるもの」
を分けると、
どこへ対策費用や時間をかけるべきか判断しやすくなります。
Q3.一人で事業をしている場合にもBCPの考え方は必要ですか?
個人事業主にも重要な考え方です。
むしろ一人で仕事をしている場合、
本人が動けなくなることがそのまま事業停止につながる可能性があります。
顧客データ、
連絡先、
パスワード、
受注情報、
会計情報などが本人しか分からない状態になっていないか確認してみましょう。
また、
自宅兼事務所の場合は、
自宅の被災がそのまま仕事の停止につながるため、
家庭の防災と事業継続を一緒に考えることが特に大切です。









