1. BCPを決めると、会社の動きが窮屈になりませんか?

ブログ2026.08.10

BCPを決めると、会社の動きが窮屈になりませんか?

BCPを決めると、会社の動きが窮屈になりませんか?







BCPを決めると、会社の動きが窮屈になりませんか?












BCPを決めると、会社の動きが窮屈になりませんか?





はじめに




BCPの話をすると、経営者や現場の担当者から、次のような声が出ることがあります。




「細かく決めると、かえって現場が動きにくくなるのではないか」




「災害の状況は毎回違うのだから、計画どおりにはならない」




「ルールが増えて、仕事が窮屈になるのは困る」




この心配は、もっともです。




災害時の状況を、事前にすべて予測することはできません。




だからこそ、よいBCPは行動を細かく縛るものではなく、
迷ったときに戻れる判断基準
として作ります。





目次




  1. BCPは命令書ではない

  2. 細かく決めすぎると動けなくなる

  3. 決めるべきことと、現場に任せること

  4. 柔軟に使えるBCPの作り方

  5. 小さな会社に適した考え方





BCPは命令書ではない




BCPを「災害時には必ずこの手順どおりに動く規則」と考えると、確かに窮屈になります。




しかし、本来のBCPは、予想外の出来事が起きたときに判断を助けるものです。




たとえば、次のような基準を決めます。




  • 人命と安全を最優先する

  • 建物の安全が確認できるまで出社させない

  • 社長と連絡が取れない場合は、指定した代理者が判断する

  • すべての業務ではなく、最重要業務から再開する

  • 復旧に時間がかかる場合は、代替手段へ切り替える




これらは、現場の選択肢を奪うものではありません。




むしろ、「何を優先すればよいか」を示すことで、現場が判断しやすくなります。




災害時には、経営者や責任者がその場にいるとは限りません。




電話やインターネットが使えず、すぐに指示を受けられない可能性もあります。




そのようなとき、何も決まっていなければ、従業員は「勝手に判断してよいのだろうか」と迷います。




判断を間違えることを恐れ、誰かの指示が来るまで動けなくなるかもしれません。




BCPに会社としての優先順位が示されていれば、従業員はその考え方を基準に行動できます。




BCPは、現場を縛るためのものではなく、現場が安心して判断するための支えです。





細かく決めすぎると動けなくなる




災害時の状況は毎回異なります。




地震の規模、発生した時間帯、従業員の居場所、建物の被害、停電の範囲、交通状況などによって、必要な対応は変わります。




そのため、すべての行動を細かく決めすぎると、実際の状況に合わなくなることがあります。




たとえば、次のように決めていたとします。




「午前9時に地震が起きたら、9時10分までに全員が会議室へ集合する」




しかし、会議室の天井が落下していたら、その場所へ集まることは危険です。




従業員の多くが通勤途中であれば、10分以内の集合はできません。




建物に入れない状況であれば、そもそも会社の中へ集まるべきではありません。




一方で、




「身の安全を確保した後、指定した方法で安否を報告する」




という決め方なら、従業員が自宅、通勤途中、外出先、会社内のどこにいても、状況に応じて対応できます。




BCPでは、時間や動作を細かく固定するよりも、目的、優先順位、判断者、連絡方法を明確にすることが大切です。




具体的な手順が必要な業務もありますが、その場合でも、手順どおりにできないときの対応を考えておく必要があります。




「手順から外れてはいけない」と考えるのではなく、「この手順は何を守るためにあるのか」を共有しておくことが重要です。





決めるべきことと、現場に任せること




柔軟に動けるBCPを作るには、事前に決めることと、災害時の現場判断に任せることを分けて考えます。




必ず守る原則




会社として、どのような状況でも大切にする考え方を決めます。




  • 命を危険にさらしてまで出社しない

  • 安全が確認できない建物には入らない

  • 従業員とその家族の安全確保を優先する

  • 無理な納期を取引先に約束しない

  • 確認できていない情報を社外へ発信しない




このような原則は、従業員が迷ったときの判断基準になります。





優先する仕事




災害時には、人、設備、時間、資金などが限られます。




そのため、すべての仕事を同時に再開しようとするのではなく、優先する仕事を決めます。




  • 最初に復旧させる商品やサービス

  • 優先して連絡する取引先

  • 最低限維持しなければならない業務

  • 停止すると人命や社会に大きな影響を与える業務

  • 会社の資金繰りに大きく関係する業務




優先順位が決まっていれば、現場は限られた力をどこへ使うべきか判断しやすくなります。





判断する人




災害対応の責任者だけでなく、その人と連絡が取れない場合の代理者も決めます。




  • 災害対応全体の責任者

  • 責任者の第一代理者

  • 第一代理者も不在の場合の第二代理者

  • 従業員の安否を確認する担当者

  • 取引先へ連絡する担当者

  • 設備やシステムを確認する担当者




名前だけでなく、どこまで判断してよいのかも共有しておくことが大切です。




たとえば、「一日の休業は総務責任者が判断できる」「一定額までの緊急購入は現場責任者が決められる」など、権限の範囲を整理します。





現場に任せること




災害時の状況によって変わる部分は、現場が判断できるようにします。




  • 安全な場所までの具体的な移動方法

  • その時点で利用できる連絡手段

  • 代替場所での細かな作業方法

  • 限られた人数での業務分担

  • 利用できる設備や道具の選択

  • 現場周辺の被害に応じた避難先の変更




すべてを経営者が細かく決めるのではなく、会社の原則と優先順位を守る範囲で、現場が判断してよいことを明確にします。




現場に判断を任せることは、責任を押しつけることではありません。




判断の基準と権限を事前に渡し、必要な行動を取りやすくすることです。






柔軟に使えるBCPの作り方




柔軟なBCPにするためには、「一つの正解」ではなく、複数の選択肢を準備します。




安否確認の方法を複数用意する




安否確認システムを導入していても、通信障害などで使えない可能性があります。




そのため、次のように複数の手段を用意します。




  1. 安否確認システム

  2. 社内チャット

  3. 電子メール

  4. 電話やショートメッセージ

  5. 災害用伝言サービス




第一の方法が使えなければ、第二、第三の方法へ切り替えます。




どの手段をどの順番で使うかを決めておけば、連絡方法をその場で一から考えずに済みます。





事務所が使えない場合を考える




建物に大きな被害がなくても、安全確認が終わるまで立ち入りできないことがあります。




その場合に備えて、次のような選択肢を考えます。




  1. 従業員が自宅から対応する

  2. 別の事業所や店舗を使う

  3. 貸し会議室や共同利用施設を使う

  4. 取引先や協力会社の場所を一時的に借りる

  5. 一部の業務を外部へ依頼する




会社によって実現できる方法は異なります。




重要なのは、「事務所が使えないなら何もできない」という状態を避けることです。





仕入先が止まった場合を考える




自社に被害がなくても、仕入先や運送会社が被災すれば、商品や材料が届かなくなることがあります。




次のような代替案を整理しておきます。




  • 別の地域にある仕入先を探しておく

  • 同じ材料を扱う会社を複数確認しておく

  • 代わりに使える材料や部品を検討する

  • 重要な材料について最低限の在庫を持つ

  • 協力会社と相互支援について話し合う




災害が起きてから初めて代替先を探しても、同じように困っている会社が多く、すぐに契約できるとは限りません。





責任者が不在の場合を考える




「社長が判断する」とだけ決めていても、社長自身が被災して連絡できなければ、会社は動けません。




そのため、責任者の順番を決めます。




  1. 代表者

  2. 第一代理者

  3. 第二代理者




さらに、責任者が切り替わる条件も決めておきます。




たとえば、「発災から一定時間連絡が取れない場合は、第一代理者が判断を引き継ぐ」という考え方です。





大切なのは、「この方法以外は認めない」と決めることではありません。




第一案が使えないときに、次の案へ移れる状態を作ることです。





小さな会社に適した考え方




中小企業や個人事業では、大企業のような分厚い計画書を作る必要はありません。




重要なのは、社員が読めること、覚えられること、そして実際に使えることです。




内容が多すぎると、災害時に必要な情報をすぐに見つけられません。




作成した担当者しか理解できない計画も、実際には役立ちにくくなります。




最初は、次の内容を一枚にまとめてもよいでしょう。




  • 最優先は人命と安全であること

  • 安否確認の方法

  • 出社するかどうかを判断する人

  • 社長不在時の代理者

  • 会社にとって最も重要な業務

  • 優先して連絡する取引先

  • 重要なデータの保存場所

  • 事務所が使えない場合の代替方法

  • 次回の訓練日や見直し日




一枚にまとめることで、内容を社内で共有しやすくなります。




必要に応じて、連絡先一覧、取引先一覧、設備の停止手順などを別紙として追加します。




計画のページ数や見た目の立派さではなく、災害時に役立つかどうかが重要です。




また、経営者だけで作るのではなく、現場の従業員にも意見を聞いてみましょう。




実際の作業を担当している人だからこそ分かる問題があります。




  • この機械を止めるには特別な操作が必要

  • このお客様には緊急時でも必ず連絡が必要

  • このデータは別の端末から開けない

  • この仕事は二人いないと再開できない

  • この材料は別の商品では代用できない




現場の意見を取り入れることで、実際に動ける計画になります。




従業員が計画作りに関われば、「会社から押しつけられた規則」ではなく、「自分たちを守るための準備」として理解しやすくなります。





まとめ+要約




BCPは、従業員の行動を細かく縛る命令書ではありません。




予想外の状況で迷ったときに、何を優先し、誰が判断するかを示すための基準です。




細かすぎる手順は、実際の災害時に使えなくなる可能性があります。




そのため、人命優先などの原則、重要業務、判断者、連絡方法を決めたうえで、具体的な対応には一定の柔軟性を持たせます。




事前にすべての行動を決めるのではなく、会社として守る原則と、現場が判断してよい範囲を分けて整理することが大切です。




また、安否確認、事務所、仕入先、責任者などについて、一つの方法だけでなく、第一案が使えない場合の第二案、第三案を用意しておきます。




小さな会社では、分厚い計画書を作る必要はありません。




従業員が読みやすく、覚えやすく、災害時に確認しやすい内容から始めることが、動きやすいBCPにつながります。





FAQ




Q1.BCPに書いていない行動をしてはいけませんか?




そのようなものではありません。




災害時には、計画を作った時点では想定できなかったことが起こります。




人命と安全を最優先にし、会社の基本方針や重要業務の優先順位を守りながら、実際の状況に応じて判断する必要があります。




BCPは、すべての行動を指定するものではなく、判断するときの基準として使います。





Q2.どこまで細かく決めればよいですか?




少なくとも、会社としての優先順位、責任者と代理者、安否確認方法、重要業務、主要な連絡先は整理しておきましょう。




設備の停止やデータの復旧など、決まった操作が必要な業務については、具体的な手順を別紙にまとめる方法があります。




すべてを一つの計画書に入れるのではなく、基本方針と細かな作業手順を分けると、見直しやすくなります。





Q3.従業員の意見も入れた方がよいですか?




入れた方が、実際に使いやすい計画になります。




日常の業務を担当する従業員にしか分からない問題や、現実的な代替方法があるためです。




また、従業員が計画作りに参加することで、BCPの目的や内容を理解しやすくなり、災害時にも自分で考えて行動しやすくなります。













記事・相談担当者:井浪(いなみ):Amazon/Kindle 著者ページ

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