エアコンの不備で従業員が熱中症に。会社はどう対応すべきか
はじめに
真夏の午後、従業員からこんな報告が入ったとします。
「倉庫のエアコンが止まっています」
修理業者に連絡したものの、訪問できるのは数日後。
繁忙期で、仕事を止めるのも難しい。
窓を開けて扇風機を回し、冷たい飲み物を置けば何とかなるだろう。
そう判断したくなるかもしれません。
しかし、その場所で従業員が熱中症になったらどうでしょうか。
「修理を依頼していた」
「水は用意していた」
「本人が大丈夫と言っていた」
それだけで、会社として十分に対応したといえるでしょうか。
今日は、エアコンの故障や能力不足が起きた場合に、会社が考えるべきことを整理します。
目次
1.エアコンの設置だけでは対策にならない
「うちにはエアコンがあるから大丈夫」
この考えには落とし穴があります。
エアコンがあっても、正常に動いていなければ意味がありません。
設定温度を下げても室温が下がらない場合、能力不足や故障、フィルターの目詰まりなどが考えられます。
また、部屋全体は涼しくても、一部の作業場所に冷気が届いていない場合があります。
厚生労働省のガイドラインでは、高温多湿な作業場所に冷房や通風設備などを設けることを検討し、すでに設置されている冷房設備については、その機能を点検することが示されています。
つまり、「あるかどうか」だけでなく、「働く場所で実際に機能しているか」が重要です。
2.故障を知った後の判断が重要
設備は突然故障することがあります。
故障自体を完全に防ぐことは難しいでしょう。
しかし、故障を知った後に何をしたかは重要です。
たとえば、次のような違いがあります。
一つ目の会社は、エアコンの故障を確認した後も、いつもどおり作業を続けさせました。
二つ目の会社は、作業場所の温度や暑さ指数を確認し、作業時間を短くし、別の涼しい場所で作業できるようにしました。修理までの間は業務時間も変更しました。
同じ設備故障でも、会社の対応は大きく異なります。
危険を知りながら放置したのか。
危険を減らすために、現実的な対策を講じたのか。
後から問われるのは、この部分です。
3.安全配慮義務とは何か
会社には、従業員が生命や身体の安全を確保しながら働けるよう、必要な配慮をする責任があります。
これを一般に安全配慮義務と呼びます。
熱中症対策では、法律で示された報告体制や対応手順を作るだけでなく、予測できる危険に対して、職場の状況に応じた対応を取ったかが重要になります。
ただし、どのような場合に安全配慮義務違反になるかは、事故の状況、会社が危険を把握していたか、どのような対策をしていたかなどによって個別に判断されます。
「エアコンが壊れたら、必ず会社の責任になる」という単純な話ではありません。
一方で、異常な暑さを認識し、エアコンの故障も把握していたのに、作業方法を変えず、休憩も増やさず、従業員からの訴えも放置した場合には、会社の対応が問題になる可能性があります。
そのため、「最低限のルールを作ったから法的に安心」と考えるのは危険です。
4.そのまま働かせないための代替策
エアコンが故障した場合、まず考えるべきことは、通常どおりの作業を続けられる環境かどうかです。
危険が高い場合には、次のような対応を組み合わせます。
作業場所を変更する
別室、別店舗、共有スペース、在宅勤務など、より涼しい場所へ移動できないか検討します。
作業時間を変更する
暑さが厳しい時間を避け、早朝や夕方に作業を移します。
作業量を減らす
納期や生産量を優先するあまり、危険な状態で通常どおり働かせてはいけません。
休憩回数を増やす
涼しい場所で身体を冷やす時間を確保します。
休憩場所まで遠い場合は、移動時間も含めて考える必要があります。
仮設設備を使う
スポットクーラー、移動式エアコン、遮熱シート、送風設備などを検討します。
ただし、扇風機だけでは、気温が高い場所で熱い空気を回すだけになる場合があります。
業務を中止する
代替策を講じても安全を確保できない場合は、作業の中止も必要です。
売上や納期への影響は小さくありません。
それでも、従業員の生命や健康より優先することはできません。
5.記録を残す理由
熱中症対策の記録は、責任逃れのために作るものではありません。
同じ問題を繰り返さないために必要です。
少なくとも、次の内容を残しておきましょう。
- 故障や異常を確認した日時
- 室温や暑さ指数
- 従業員からの申告内容
- 修理を依頼した日時
- 応急対応の内容
- 作業時間や場所の変更
- 体調不良者への対応
- 復旧を確認した日時
記録があれば、翌年の点検時期や、設備更新の判断にも使えます。
「去年も同じ時期に故障した」
「午後になると能力が足りなくなる」
「この作業場所だけ温度が高い」
こうした傾向が見えるようになります。
まとめ+要約
エアコンは、設置されているだけでなく、実際の作業場所で正常に機能していることが重要です。
故障や能力不足を把握した場合は、そのまま通常どおり働かせるのではなく、作業場所、作業時間、作業量、休憩、仮設設備などを見直す必要があります。
法令上の体制や手順を整えていても、危険な職場環境を放置してよいわけではありません。
熱中症による被害が起きた場合、安全配慮が十分だったかは、会社が危険をどこまで把握し、どのような対応を取ったかによって個別に判断されます。
設備の異常に気づいたら、修理依頼だけで終わらず、安全に働ける状態かを改めて判断しましょう。
FAQ
Q1.エアコンが故障しても、扇風機があれば仕事を続けられますか?
気温や湿度、作業内容によって異なります。高温の場所では、扇風機だけでは十分に身体を冷やせない場合があります。暑さ指数を確認し、場所や時間の変更を含めて判断してください。
Q2.従業員本人が「大丈夫」と言えば働かせてもよいですか?
本人が大丈夫と言っていても、判断力が低下している可能性があります。職場として体調や受け答えを確認し、危険があれば作業を中断させる必要があります。
Q3.修理業者をすぐ呼べない場合はどうすればよいですか?
作業場所の変更、時間短縮、休業、在宅勤務、仮設冷房などを検討します。安全を確保できない状態で、通常どおりの作業を続けさせないことが重要です。









