106万円の壁撤廃に備える実務対応|中小企業が今から進める5つの準備
はじめに
「制度はわかった。でも、結局うちは何をすればいいのか?」
多くの経営者や担当者が知りたいのは、ここです。
2026年10月に賃金要件が撤廃予定となり、さらに企業規模要件も段階的に縮小・撤廃される予定です。厚生労働省資料では、2027年10月から36人以上、2029年10月から21人以上、2032年10月から11人以上、2035年10月から10人以下へと対象が広がる流れが示されています。
つまり、今回の改正は一度だけ対応すれば終わりではありません。数年かけて、会社の労務管理そのものを見直す必要があります。
1. 準備1:対象者を洗い出す
最初にやるべきことは、対象者の洗い出しです。
難しく考える必要はありません。まずは、パート・アルバイトの一覧を作ります。
確認する項目は、氏名、雇用区分、週の所定労働時間、月額賃金、学生かどうか、雇用見込み、現在の社会保険加入状況です。
特に注意したいのは、週20時間前後で働く人です。
今は週18時間でも、繁忙期に20時間を超える人。
契約上は短時間でも、実態として長く働いている人。
人手不足で今後時間を増やしてもらいたい人。
こうした人は、早めに確認しておく必要があります。
2. 準備2:社会保険料の増加額を試算する
次に、会社負担がどのくらい増えるかを試算します。
ここで完璧な数字を出す必要はありません。最初は概算で十分です。
対象になりそうな人数を出し、給与額をもとに、1人あたりの会社負担を見ます。それを月額、年額で確認します。
たとえば、対象者が3人の場合と10人の場合では、会社への影響は大きく変わります。
試算をしておくと、次の判断がしやすくなります。
価格改定が必要か。
人員配置を変えるべきか。
勤務時間を増やして生産性を高めるべきか。
採用方針を見直すべきか。
資金繰りに反映すべきか。
「なんとなく負担が増えそう」ではなく、「年間でこのくらい増えそう」と見えるだけで、打ち手が変わります。
3. 準備3:雇用契約とシフトを確認する
社会保険加入の判断では、実際の働き方だけでなく、雇用契約の内容も重要です。
契約書では週15時間となっているのに、実際には週22時間働いている。
シフトが月によって大きく変わる。
繁忙期だけ長時間勤務になる。
契約更新時に条件を確認していない。
こうした状態は、制度改正後にトラブルになりやすい部分です。
2026年10月を待たずに、雇用契約書、労働条件通知書、シフト実態を確認しておきましょう。
4. 準備4:従業員説明の流れを作る
制度変更は、従業員にとって手取りや家計に関わる話です。
そのため、説明の流れを事前に決めておくことが大切です。
おすすめの流れは、次の通りです。
まず、全体に制度変更の概要を伝える。
次に、対象になりそうな人へ個別に説明する。
その後、本人の働き方の希望を聞く。
必要に応じて、契約内容や勤務時間を見直す。
最後に、決定内容を書面で確認する。
この流れがあるだけで、現場の混乱は減ります。
また、厚生労働省は、企業規模要件を満たさない企業でも、従業員の2分の1以上の同意があれば短時間労働者を任意で社会保険に加入させることができると説明しています。
制度を正しく理解したうえで、自社に合った説明をすることが大切です。
5. 準備5:経営計画に反映する
社会保険料の負担増は、労務だけの問題ではありません。経営の問題です。
人件費が増えるなら、その分をどこで吸収するのかを考える必要があります。
売上を増やすのか。
価格を見直すのか。
業務効率を上げるのか。
勤務時間を増やして生産性を高めるのか。
採用人数を見直すのか。
ここを考えないまま制度対応だけをすると、会社にじわじわ負担が残ります。
一方で、社会保険加入を前向きに伝えることで、従業員の定着につながる可能性もあります。
「安心して長く働ける会社」として見られれば、採用にも良い影響があります。
負担増を単なるコストとして見るのではなく、人材戦略の一部として考えることが重要です。
まとめ
106万円の壁撤廃に備えるには、次の5つを順番に進めることが大切です。
対象者を洗い出す。
社会保険料の増加額を試算する。
雇用契約とシフトを確認する。
従業員説明の流れを作る。
経営計画に反映する。
制度変更は避けられませんが、早く動けば選択肢は増えます。
中小零細企業ほど、早めの準備が会社と従業員の安心につながります。
FAQ
Q1. まず何から始めるべきですか?
パート・アルバイトの勤務時間と賃金を一覧にすることから始めましょう。対象者の洗い出しが最初の一歩です。
Q2. 雇用契約書の見直しは必要ですか?
必要になる可能性があります。契約上の勤務時間と実際の勤務時間に差がある場合は、早めに確認した方が安全です。
Q3. 社会保険料負担を理由に勤務時間を減らしてもよいですか?
一方的な変更はトラブルにつながる可能性があります。本人の希望を確認し、契約内容を整理しながら慎重に進めることが大切です。









