労働安全衛生法改正で中小企業がまず知るべきこと|フリーランスにも安全配慮が必要に
はじめに
「うちは社員が少ないから、そこまで関係ないだろう」
「外注さんや一人親方は、会社の従業員ではないから対象外では?」
そう感じている中小企業経営者の方は少なくないかもしれません。
しかし、労働安全衛生法の改正により、これからは同じ場所で働くフリーランス、個人事業主、一人親方、出入り業者などにも、安全衛生上の配慮が求められる場面が増えます。
厚生労働省は、労働者と同じ場所で働く個人事業者等を、労働安全衛生法による保護の対象および義務の主体として位置づけたと説明しています。
つまり、これからの安全管理は「雇っている人だけを見る」時代から、同じ現場で働く人全体を見る時代へ変わっていきます。
1. なぜ今、個人事業者への安全衛生対策が必要なのか
これまで多くの企業では、安全衛生管理というと「従業員のためのもの」と考えられてきました。
もちろん、従業員の安全を守ることは今後も重要です。
しかし現実の現場では、従業員だけが働いているわけではありません。
たとえば、次のような人たちが同じ場所で作業しているケースがあります。
- 業務委託の職人
- 一人親方
- フリーランスの技術者
- 配送・設置・修理の外部業者
- 短時間だけ入る個人事業主
- 元請・下請の関係で入る作業者
こうした人たちは、雇用契約上は「労働者」ではない場合があります。
しかし、危険な機械、足場、熱中症リスク、化学物質、騒音、転倒リスクなどにさらされる点では、従業員と大きく変わりません。
厚生労働省の説明資料でも、既存の労働災害防止対策に個人事業者等も取り込み、労働者だけでなく個人事業者等による災害防止を図ることが示されています。
ここで大切なのは、「契約形態」だけで判断しないことです。
同じ場所で働いている。
同じ危険にさらされている。
同じ事故に巻き込まれる可能性がある。
この状態であれば、会社側にも安全面での配慮が求められる可能性があります。
2. 中小企業に関係する主な変更点
今回の改正で、中小企業経営者が特に押さえておきたいポイントは、次の3つです。
1つ目は、注文者等が講ずべき措置が定められることです。
発注者、注文者、作業場所を管理する会社などは、個人事業者等を含む作業従事者の混在作業による災害防止対策などを考える必要があります。厚生労働省資料では、注文者等が講ずべき措置として、混在作業による災害防止対策の強化などが示されています。
2つ目は、個人事業者等自身にも講ずべき措置が定められることです。
これは「会社だけが全部責任を負う」という意味ではありません。
個人事業者等も、安全衛生教育の受講など、自分自身で守るべき事項があります。
3つ目は、業務上災害の報告制度等が設けられることです。
厚生労働省の資料では、個人事業者等自身が講ずべき措置や業務上災害の報告制度等を定めるとされています。施行期日は段階的で、一部は令和9年1月1日、つまり2027年1月1日施行とされています。
3. 「発注者」「作業場所の管理者」が注意すべきこと
中小企業で特に注意したいのは、次のようなケースです。
たとえば、自社工場に外部の修理業者が入る。
店舗改装で個人事業主の職人に作業を依頼する。
倉庫内で委託ドライバーが荷物を扱う。
建設・内装・設備工事で、一人親方が現場に入る。
こうした場面では、「うちの社員ではないから知らない」では済まされにくくなります。
厚生労働省資料では、事業者、つまり注文者等が自身で管理する場所において、労働者に加え、その場所で働く労働者以外の者も含めた保護措置を実施する考え方が示されています。
ここで大事なのは、難しい制度名を覚えることではありません。
まずは、次のように考えてください。
「この人がケガをしないために、うちが事前に伝えるべきことはないか?」
「危険な場所を知らせているか?」
「立入禁止や退避ルールを共有しているか?」
「保護具が必要な作業なら、その必要性を伝えているか?」
「作業方法や作業範囲をあいまいにしていないか?」
これらは、大企業だけの話ではありません。
むしろ、人手が限られる中小企業ほど、ルールが口頭や慣習に頼りがちです。
だからこそ、早めに見直す価値があります。
4. まず見直したい社内・現場の考え方
今回の改正対応で最初に必要なのは、完璧なマニュアルを作ることではありません。
最初に必要なのは、経営者自身が次の考え方に切り替えることです。
「外注先も、現場に入れば安全管理の対象になる」
この意識があるだけで、現場の声かけや契約時の確認が変わります。
たとえば、これまでなら、
「いつもの作業だから大丈夫でしょう」
「慣れている人だから任せておけばいい」
「外注さんの安全は外注さんの責任」
と考えていたかもしれません。
しかし、これからは、
「危険箇所は事前に伝えたか」
「作業場所のルールを共有したか」
「急な変更で無理な作業になっていないか」
「安全に必要な時間や費用を削っていないか」
という視点が必要になります。
厚生労働省資料でも、発注条件が受注者の安全衛生に影響を及ぼす可能性や、安全衛生経費の必要性についての意識啓発、作業内容・作業条件を契約時に明確化することが示されています。
中小企業にとって、安全対策は「コスト」に見えることがあります。
しかし、事故が起きた後の対応、信用低下、取引停止、損害賠償、労務トラブルを考えると、事前の対策はむしろ経営を守る投資です。
まとめ+要約
労働安全衛生法の改正により、今後はフリーランス、個人事業主、一人親方、出入り業者など、労働者ではない人についても、同じ作業場所で働く場合には安全衛生上の配慮が重要になります。
中小企業が最初に行うべきことは、難しい制度をすべて暗記することではありません。
まずは「外部の人も、現場に入れば安全管理の対象になる」という考え方に切り替えることです。
特に発注者や作業場所の管理者は、危険箇所、作業方法、保護具、立入禁止、退避方法などを事前に伝える体制を整える必要があります。
FAQ
Q1. フリーランスに仕事を頼んだだけでも対象になりますか?
仕事内容や作業場所によります。特に、自社が管理する場所で作業してもらう場合や、従業員と同じ場所で作業する場合は注意が必要です。
Q2. 個人事業主本人にも義務はありますか?
あります。厚生労働省資料では、個人事業者等自身が講ずべき措置として、安全衛生教育の受講等や業務上災害の報告制度等が示されています。
Q3. 中小企業は何から始めればよいですか?
まずは、自社に出入りする外部作業者を洗い出し、どの場所で、どんな危険があるかを確認することから始めるのが現実的です。









