1. 中小運送会社の現場で起きる「物効法対応のつまずき」と改善事例

ブログ2026.05.01

中小運送会社の現場で起きる「物効法対応のつまずき」と改善事例

中小運送会社の現場で起きる「物効法対応のつまずき」と改善事例



中小運送会社の現場で起きる「物効法対応のつまずき」と改善事例





はじめに



改正物流効率化法への対応で、多くの中小運送会社が最初につまずくのは、法律の文章そのものではありません。



本当に難しいのは、現場を変えることです。



「ドライバーが記録してくれない」

「荷主に言い出しにくい」

「元請けとの関係が悪くなるのが怖い」

「忙しくて改善どころではない」



このような悩みは、決して珍しくありません。



この記事では、中小運送会社で起こりやすいつまずきと、それをどう乗り越えるかを、具体的な事例形式で紹介します。







つまずき1:記録が続かない



ある中小運送会社では、改正物流効率化法への対応として、荷待ち時間の記録を始めました。



最初は社長がこう言いました。



「今日から全員、待ち時間を細かく書いてください」



しかし、1週間後に確認すると、記録はバラバラでした。



あるドライバーは分単位で書いている。

別のドライバーは「長い」「普通」だけ。

忙しい日は空欄。

夜にまとめて思い出して書く人もいる。



これでは、荷主に説明できる資料になりません。



この会社が見直したのは、記録項目を減らすことでした。



最初から完璧な日報を作るのではなく、次の4つだけにしました。



「到着時刻」

「作業開始時刻」

「作業終了時刻」

「困ったこと」



これだけにすると、記録率が上がりました。



ポイントは、現場が続けられる形にすることです。



法律対応だからといって、最初から細かすぎる記録を求めると、ドライバーは負担に感じます。

まずは簡単に始めて、後から必要な項目を増やすほうが現実的です。





つまずき2:荷主に言い出せない



別の会社では、ある荷主のセンターで毎回1時間以上の荷待ちが発生していました。



社長も配車担当も、それを知っていました。

ドライバーからも不満が出ていました。



しかし、誰も荷主に言えませんでした。



理由は単純です。



「仕事を切られたら困る」

「値上げ交渉だと思われたくない」

「長年の付き合いを壊したくない」



中小零細企業にとって、これは切実な問題です。



そこで、この会社は伝え方を変えました。



最初から「改善してください」と言うのではなく、

「法律対応の流れもあるので、現場時間を一緒に確認させてください」

という形で相談しました。



さらに、次のような伝え方にしました。



「御社を責めたいわけではありません」

「今後も安定して運ぶために、現場の状況を共有したいです」

「ドライバーの拘束時間が長くなると、将来的に便を維持しづらくなります」



この言い方に変えたことで、荷主も話を聞きやすくなりました。



大切なのは、対立ではなく共同改善の姿勢です。



改正物流効率化法では、荷主にも荷待ち時間や荷役時間の短縮に向けた取り組みが求められています。厚生労働省の物流情報局でも、予約受付システムの導入、日時指定の分散、パレット導入、検品効率化などが例として示されています。



つまり、運送会社だけが我慢する話ではありません。





つまずき3:現場が「また仕事が増えた」と感じる



物効法対応を始めると、ドライバーや配車担当からこう言われることがあります。



「また書類ですか」

「忙しいのに、これ以上やることを増やさないでください」

「結局、現場に負担が来るだけですよね」



この反応は自然です。



なぜなら、現場から見ると、法律対応はすぐにメリットが見えにくいからです。



そこで重要なのは、目的を伝えることです。



「国に出す資料のため」だけでは、現場は動きません。



それよりも、次のように伝えるほうが納得されやすくなります。



「待ち時間を減らすために記録する」

「契約外の作業を見直すために記録する」

「無理な運行を減らすために記録する」

「荷主と交渉する材料にするために記録する」



人は、自分に関係のある理由が見えると、協力しやすくなります。



現場が「会社のために書かされている」と感じるか、

「自分たちの働き方を守るために記録している」と感じるか。



この違いは大きいです。





つまずき4:元請け・下請け関係で話が止まる



運送業では、荷主と直接契約していないケースもあります。



元請け、一次請け、二次請け、三次請け。

こうした多重構造の中で、実際に走っている会社が一番現場の負担を受けていることもあります。



「荷主に直接言えない」

「元請けに言っても動いてくれない」

「待ち時間が長くても、料金に反映されない」



このような悩みは深刻です。



この場合も、まず必要なのは記録です。



感情だけで伝えると、

「どこも大変だから」

「今まで通りでお願いします」

で終わってしまうことがあります。



しかし、記録があれば違います。



「この現場では平均75分の待機が発生しています」

「月間で合計30時間以上の待機があります」

「検品補助に1回あたり平均40分かかっています」



このように数字で示すと、元請けも無視しにくくなります。



2026年4月からは、一定規模以上の特定事業者に中長期計画や定期報告などが義務付けられています。特定事業者側も、物流効率化の実態を把握し、改善していく必要があります。



その意味で、現場の記録は下請け側にとっても重要な交渉材料になります。





改善が進む会社に共通する考え方



改善が進む会社には、共通点があります。



それは、法律対応を「義務だから仕方なくやるもの」と見ていないことです。



むしろ、次のように考えています。



「現場の困りごとを見える化する機会」

「荷主と話し合うきっかけ」

「運賃や作業条件を見直す材料」

「ドライバーを守るための仕組み」

「会社を選ばれる運送会社に変える機会」



同じ法律対応でも、受け止め方で結果は変わります。



もちろん、すぐにすべてが解決するわけではありません。



荷主が動かないこともあります。

元請けが聞いてくれないこともあります。

社内の記録が続かないこともあります。



それでも、何もしなければ、現場の負担は見えないままです。



見えない負担は、いつかドライバーの退職、事故リスク、利益悪化として表に出てきます。



だからこそ、小さくても記録し、話し合い、改善を積み重ねることが大切です。





まとめ+要約



改正物流効率化法への対応で中小運送会社がつまずきやすいポイントは、記録が続かないこと、荷主に言い出せないこと、現場が負担に感じること、元請け・下請け関係で話が止まることです。



これらを乗り越えるには、完璧を目指すのではなく、続けられる形で始めることが大切です。



荷待ち時間や荷役作業を簡単に記録する。

荷主には対立ではなく共同改善として伝える。

現場には「自分たちを守るための記録」だと説明する。

元請けには数字で実態を示す。



物効法対応は、書類を整えるだけの仕事ではありません。



現場の負担を見える化し、働き方と取引条件を見直すためのきっかけです。





FAQ



Q1. ドライバーが記録を面倒がる場合はどうすればよいですか?



最初から細かい項目を求めず、到着時刻、作業開始時刻、作業終了時刻、困ったことなど、最低限の項目から始めると続きやすくなります。



Q2. 荷主に改善をお願いすると取引を切られませんか?



伝え方が重要です。相手を責めるのではなく、安定した輸送を続けるための共同改善として相談する形が望ましいです。記録や数字を使って冷静に伝えることも大切です。



Q3. 元請けが動いてくれない場合はどうすればよいですか?



まずは現場実態を数字で整理してください。平均待機時間、月間の待機時間、契約外作業の内容などを示すことで、交渉の土台を作れます。




記事・相談担当者:井浪(いなみ):Amazon/Kindle 著者ページ

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