1. 高年齢労働者対策の実践事例3選|中小企業の「お金をかけない」労災防止の工夫

ブログ2025.12.22

高年齢労働者対策の実践事例3選|中小企業の「お金をかけない」労災防止の工夫

高年齢労働者対策の実践事例3選|中小企業の「お金をかけない」労災防止の工夫





高年齢労働者対策の実践事例3選|中小企業の「お金をかけない」労災防止の工夫








高年齢労働者対策の実践事例3選|中小企業の「お金をかけない」労災防止の工夫





はじめに



Day1・Day2では、「2026年4月から何が変わるのか」「法律とガイドラインは何を求めているのか」という、全体像と基本的な考え方を整理してきました。



ただ、ここまで読まれた方の中には、



  • 「結局、現場では何をすればいいの?」

  • 「自分の会社に落とし込むイメージがまだわかない」



と感じている方も多いと思います。



そこでDay3では、「実際にこんな取り組みをしたら、こう変わった」という、
中小企業の架空のモデル事例を3つご紹介します。



業種は、



  • 製造業

  • 飲食店

  • 介護・福祉



の3パターンです。
「うちの会社に近いのはどれかな?」とイメージしながら読んでいただくと、自社での取り組みのヒントが見つかりやすくなります。






目次



  1. 事例①:製造業A社(社員20名・60代のベテラン作業員)

  2. 事例②:飲食店B店(パートの60代スタッフが中心)

  3. 事例③:介護事業所C社(高年齢ヘルパー多数)

  4. 3つの事例に共通する成功パターン

  5. つまずきやすいポイントと注意点

  6. まとめ+要約

  7. FAQ(よくある質問)

  8. 無料相談のご案内






1. 事例①:製造業A社(社員20名・60代のベテラン作業員)



1-1. 会社概要と状況



A社は、地方の工業団地にある、社員20名ほどの金属部品メーカーです。
現場の中核を担っているのは、60代前半のベテラン作業員3名
彼らは、段取り・機械操作・品質チェックなど、現場の要となる仕事を担っていました。



1-2. 課題:脚立からの転落事故と「ヒヤリハット」の増加



ある日、60代のベテラン社員が、棚の上段から部品箱を取ろうとして脚立から転落し、足首を骨折。
3か月の休業となり、現場は大きな痛手を受けました。



事故後に振り返りをすると、以前から次のような「ヒヤリハット」が報告されていたことが分かりました。



  • 高い棚に部品を取りに行くとき、バランスを崩しそうになる

  • 脚立の上で体勢を変えたときにグラッとする

  • 床に置いてあるコードや部品に足を引っかけそうになる



しかし現場としては、
「今までも何とかやってこれたし、忙しいから後回し」
という雰囲気があり、抜本的な見直しが先送りされていました。



1-3. 実施した対策



① 簡易リスクアセスメントを実施



まず、社長と現場リーダー、高年齢の従業員を含めた3名で、工場内を見回りながら簡単なリスクアセスメントを行いました。



  • 転倒・転落しそうな場所

  • 重い荷物を持ち上げる場面

  • 暗くて見えづらい場所



をチェックしながら、



  • 危険度(大・中・小)

  • 発生頻度(よくある・たまにある・ほとんどない)



をそれぞれ3段階で評価し、紙1枚にまとめました。



② 脚立作業の原則禁止と作業方法の変更



最も危険度が高いと判断したのが、「脚立での高所作業」でした。
そこでA社は、



  • 脚立を使った作業を原則禁止とする

  • 棚のレイアウトを変更し、よく使う部品は胸〜腰の高さに集約する

  • 長い柄のついた専用工具を使い、できるだけ無理な姿勢を避ける



という方針に切り替えました。



③ 照明と床環境の改善(できる範囲+補助金活用)



あわせて、次のような環境改善も行いました。



  • 暗くなりがちな棚の奥にLED照明を追加

  • 滑りやすかった通路に、防滑マットを敷く

  • 床に置いていたコード類を束ね、壁側に固定する



一部の設備導入には、エイジフレンドリー関連の補助金も活用し、自社負担を抑えながら改善を行いました。



④ ベテラン社員の役割再設計



さらに、60代社員に対しては、



  • 高所作業や重量物の持ち運びは若手中心に

  • 段取り・検査・教育など、「経験を活かす役割」を増やす



という形で、役割分担を見直しました。



1-4. 結果と変化



対策から1年後、A社では、



  • 転倒・転落のヒヤリハット件数が約6割減少

  • 60代社員の「足場が怖い」という声がほとんど聞かれなくなった

  • 若手が荷物運搬をサポートすることで、現場のコミュニケーションが増加



という変化がありました。



また、脚立作業を減らしたことで、脚立自体を現場から撤去できた場所も増え、結果的に全世代の安全性も向上する効果がありました。






2. 事例②:飲食店B店(パートの60代スタッフが中心)



2-1. 店舗概要と状況



B店は、駅前にある個人経営のカフェ・レストラン。スタッフは10名ほどで、そのうち5名が60代のパートスタッフです。



長年働いているスタッフが多く、常連さんからの信頼も厚い一方で、



  • 「最近、腰が痛くて立ちっぱなしがつらい」

  • 「忙しいときに走っていて、何度か転びそうになった」



といった声が増えてきていました。



2-2. 課題:疲労と転倒リスク、そして「家に帰っても休めない」状況



B店の最大の課題は、次の3つでした。



  • ランチとディナーのピーク時に、60代スタッフがフル稼働し、疲労が蓄積していた

  • 狭い通路を料理を持って走ることが多く、転倒の危険が高かった

  • 閉店後に店長からLINEで次の日の相談が来るなど、「つながらない時間」が少なかった



2-3. 実施した対策



① シフトの分割と連続勤務時間の見直し



まず、60代スタッフについて、



  • ランチピークだけ/ディナーピークだけの短時間シフトを導入

  • 1日の連続勤務時間を、原則4~5時間以内に抑える

  • 週あたりの連続勤務日数が続きすぎないよう、休日の取り方を調整



という形で、「短時間で集中して働き、しっかり休む」働き方に変えました。



② 動線と床環境の改善



次に、店内の動線を見直しました。



  • よく通る通路のマットを滑りにくいものに交換

  • 足元に置いていた段ボールや備品を撤去し、ストックルームへ移動

  • 配膳動線が重ならないよう、スタッフ同士で「通路の使い方のルール」を決める



特に、「ここを通るとよくぶつかる」「ここは狭くて危ない」という場所を中心に改善しました。



③ 「つながらない時間」の設定(簡易版つながらない権利)



また、店長とスタッフとの話し合いの中で、



  • 閉店後30分以降は、原則として店長からスタッフへの電話・LINEをしない

  • 急ぎでない用件は、翌営業日の出勤後に口頭または連絡ノートで共有する



というルールを決めました。



これは、世の中で議論されている「つながらない権利」を、B店なりにアレンジした形です。



2-4. 結果と変化



対策を行った結果、B店では、



  • 60代スタッフの腰痛を理由とした欠勤が減少

  • 「家に帰ってからも仕事モードが抜けない」という声が減り、睡眠の質が改善したという実感の声が出てきた

  • ピークタイムに無理をしなくなり、走る場面が減ったことで、転倒しかける回数も大きく減った

  • 「長く続けたいから、今のうちから無理しない働き方に変えられて良かった」というコメントがスタッフから出た



という変化が見られました。



売上への影響が心配でしたが、店長は「スタッフが元気に働ける方が、お店全体の雰囲気もよくなり、結果的に常連さんも増えた」と感じているそうです。






3. 事例③:介護事業所C社(高年齢ヘルパー多数)



3-1. 事業所概要と状況



C社は、訪問介護を中心とした介護事業所です。
登録ヘルパーは30名ほどで、そのうち半数以上が60~70代
利用者さんとの関係性も深く、ベテランヘルパーの存在が事業所の強みになっていました。



3-2. 課題:腰痛リスクと「辞めたくないけれど不安」という声



しかし、業務の性質上、



  • ベッドからの起き上がり介助

  • 移乗(ベッドから車椅子への移動など)

  • 入浴介助



など、腰や膝に負担がかかる場面が多く、60代後半以降のヘルパーからは、



  • 「利用者さんのことを思うと続けたいが、腰が不安」

  • 「70歳になったら続けられる自信がない」



といった声があがるようになっていました。



3-3. 実施した対策



① 介護機器の導入と補助金活用



まずC社は、エイジフレンドリー関係の支援制度も参考にしながら、



  • 移乗用のリフト

  • スライディングシートなどの福祉用具

  • 腰への負担を軽くする簡易的な補助器具



を導入しました。



機器の一部については、国や自治体の補助制度を活用し、自己負担を抑えています。



② 高年齢ヘルパーの業務内容の見直し



次に、ヘルパーの業務内容を整理し、



  • 入浴介助や移乗など、身体的負担の大きい業務

  • 見守り・生活援助(掃除・洗濯・買い物など)中心の業務



に分類しました。



そのうえで、



  • 60代後半以上のヘルパーには、生活援助と見守り中心の担当を増やす

  • 身体介助がどうしても必要なケースでは、介護機器を優先的に利用する



という方針を定めました。



③ 毎朝5分の「腰痛予防体操」



さらに、事業所に集まるタイミングで、



  • 腰・膝に負担をかけにくい動き方

  • 簡単なストレッチ・体操



を、毎朝5分だけ全員で行うことにしました。



体操の内容は難しいものではなく、「無理をしない範囲でできるもの」を理学療法士に一度アドバイスしてもらい、その後は事業所内で継続しています。



3-4. 結果と変化



こうした取り組みの結果、C社では、



  • 腰痛による長期休業が1年間ゼロ

  • 「70歳まで続けられそう」という声が増えた

  • 若手ヘルパーから「ベテランの方に、技術や声かけを教えてもらえる時間が増えた」というポジティブな反応



という成果が出てきました。



特に、「辞めたくないけれど不安」という声が、「ここなら安心して長く働ける」に変わったことは、事業所にとって大きな財産となりました。






4. 3つの事例に共通する成功パターン



業種は違っても、3つの事例には共通するポイントがあります。



共通点1:現場の声から出発している



どの事例でも、



  • 「最近、ここが怖い」

  • 「ここがしんどい」



といった現場の声を出発点にしています。



経営側だけで机上の計画を立てるのではなく、高年齢の従業員本人に一緒に考えてもらうことで、



  • 本当に必要な対策が見えてくる

  • 「やらされ感」が減り、協力を得やすくなる



といった効果が生まれていました。



共通点2:小さく始めて、段階的に広げている



3社とも、最初から大規模な設備投資や全面的なシフト変更をしたわけではありません。



  • 脚立を使う作業を減らすところから

  • 通路のマットを変えるところから

  • 1日5分の体操から



といったように、「すぐにできる小さな一歩」から始めています。



その結果、



  • 現場の反応を見ながら、少しずつ次のステップに進める

  • 無理なく継続しやすい



というメリットが生まれていました。



共通点3:高年齢従業員の「役割価値」を高めている



もう一つの共通点は、
「危ない作業を減らした代わりに、その人の強みを活かす役割を増やしている」
という点です。



  • A社:高所作業を減らす代わりに、段取り・検査・教育を増やした

  • B店:長時間シフトを減らす代わりに、ピークタイムの接客・常連対応を任せた

  • C社:身体介助を減らす代わりに、見守りや生活援助、若手への指導を増やした



こうした工夫によって、高年齢従業員自身も、



  • 「年齢を理由に仕事を取り上げられた」のではなく

  • 「経験を評価されて、新しい役割を任された」



と感じやすくなります。






5. つまずきやすいポイントと注意点



つまずきポイント1:安全対策=コスト、と見えてしまう



経営側にとって、「設備投資」や「シフト見直し」は負担に見えやすく、
「今は売上も厳しいし、後回しでいいか」
となりがちです。



しかし実際には、



  • 1回の重大事故で、長期休業や代替要員の手配、休業補償などのコストが一気にかかる

  • ベテランが突然働けなくなることで、品質やサービス水準が下がるリスクがある



という現実があります。



そう考えると、「今のうちに小さな対策をしておくこと」は、将来の大きな損失を防ぐ投資とも言えます。



つまずきポイント2:「本人が大丈夫と言っているから」と油断してしまう



高年齢の従業員の中には、責任感が強く、
「自分はまだ若い人には負けない」「今の仕事を減らしたくない」
と考える方も多くいます。



そのため、「本人が大丈夫と言っているから」と、危険な作業をそのまま任せてしまうケースも少なくありません。



ですが、体力や反応速度の変化は、本人が自覚している以上に進んでいることもあります。
事業者としては、



  • 「大丈夫と言っているから任せる」ではなく、

  • 「大丈夫と言う人ほど守る」という発想



で、客観的にリスクを見ていくことが大切です。



つまずきポイント3:現場への説明不足で「負担だけ増えた」と感じさせてしまう



シフト変更や新ルールの導入は、どうしても一時的に「面倒」と感じられます。
説明が足りないと、



  • 「またルールが増えた」

  • 「現場のことを分かっていない」



という不満につながりかねません。



そうならないためには、



  • なぜ今、この対策が必要なのか

  • 誰を守るためのものなのか

  • その結果、どんな良いことが期待できるのか



を、できるだけ言葉で伝え、現場の意見を聞きながら進めることが重要です。






6. まとめ+要約



  • 製造業・飲食店・介護事業所など、業種は違っても、高年齢労働者の労災防止対策は「現場の声から小さく始める」ことで、着実に進めることができます。

  • 脚立作業の見直し、通路の改善、介護機器の導入、シフトの短時間化、「つながらない時間」の設定など、できることは意外と多くあります。

  • 成功している事例に共通しているのは、「危ない作業を減らす代わりに、その人の経験を活かす役割を増やしている」という点です。

  • 「安全対策=コスト」と見るのではなく、「ベテランが長く安心して働き続けられるようにする投資」と捉えることで、前向きに取り組みやすくなります。

  • 2026年の努力義務化に向けて、今から少しずつ「自社なりの工夫」を積み重ねておくことが、将来の大きなトラブルを防ぐことにつながります。



次回(Day4)では、これまでの内容を踏まえて、「2026年4月までに、順番に何をやっていけばいいのか」をステップごとのロードマップとして整理していきます。






7. FAQ(よくある質問)



Q1. 具体的な事例をマネしても大丈夫でしょうか?



A. そのままコピーするのではなく、自社の実情に合わせてアレンジすることが大切です。
たとえば、「脚立作業の禁止」という方針でも、業種や作業内容によっては完全にゼロにするのが難しい場合もあります。その場合は、



  • 使用できる条件を厳しくする

  • 使用する際の見守りや補助をルール化する



など、現場と相談しながら調整する必要があります。



Q2. お金をあまりかけずにできる対策には、どんなものがありますか?



A. たとえば、次のようなものは、比較的コストをかけずに始められます。



  • 高年齢従業員と一緒に、危険な場所・つらい作業を洗い出す

  • 段差や滑りやすい床に注意喚起のテープやマットを敷く

  • 荷物の置き場所を変えて、ムダな持ち運びを減らす

  • シフトの組み方を見直し、連続勤務や長時間勤務を減らす

  • 1日5分の体操・ストレッチを始める



これらは、今日からでも始められる対策です。



Q3. 高年齢の従業員が「まだまだ大丈夫」と言って、対策に協力してくれないかもしれません。



A. そのような場合は、次のような伝え方が効果的です。



  • 「今のうちから一緒に工夫して、長く元気に働けるようにしたい」

  • 「あなたの経験が会社にとって大きな財産なので、それを守りたい」

  • 「若い人にも、安全なやり方を見せるロールモデルになってもらいたい」



といったように、「守る」「期待している」というメッセージを伝えながら、対策の意味を共有していくことが大切です。






8. 無料相談のご案内



ここまでお読みいただき、「事例はイメージできたけれど、うちの場合にはどう当てはめればいいのか分からない」と感じている方も多いと思います。



実際には、



  • 従業員の年齢構成

  • 業種・業務内容

  • すでに起きている労災やヒヤリハットの状況



によって、優先すべき対策や進め方は大きく変わります。



そうした個別の事情に合わせた具体的な整理こそ、専門家に相談していただくことで、時間と労力を大きく節約できる部分です。






記事・相談担当者:井浪(いなみ):Amazon/Kindle 著者ページ


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