1. 2026年法改正とカスタマーハラスメント義務化に向けた体制づくり

ブログ2025.12.13

2026年法改正とカスタマーハラスメント義務化に向けた体制づくり

2026年法改正とカスタマーハラスメント義務化に向けた体制づくり





2026年法改正とカスタマーハラスメント義務化に向けた体制づくり【Day4】





2026年法改正とカスタマーハラスメント義務化に向けた体制づくり【Day4】



はじめに


Day1~Day3では、



  • ハラスメント対策全体の地図(4+カスハラ)

  • どこからがハラスメントになるのかという線引き

  • 中小企業で実際に起きやすい事例と、そのリスク


について整理してきました。


多くの経営者・役員の方が、ここで感じている本音はおそらく、



  • 「法律が厳しくなるのは分かったけれど、具体的に何を整えればいいのか分からない」

  • 「中小企業なりの“無理のないやり方”を知りたい」

  • 「カスハラ対策まで含めて、一体どうやって管理すればいいのか…」


というあたりではないでしょうか。


2025年に成立した法改正により、カスタマーハラスメント対策は「やっておいた方がよいこと」から、「すべての事業主に求められる義務」へと重みが変わりつつあります。


一方で、「大企業のように専任部署を作るのは現実的ではない」というのも、中小企業の正直な事情です。


そこでDay4では、



  • 2026年前後の法改正で、何がどう変わるのか(中小企業向けに要約)

  • 日々の現場に落とし込むための「体制づくり7ステップ」

  • リソースが限られていても回せる、中小企業ならではの工夫


を、できるだけ具体的にお伝えします。


「完璧な仕組み」を一気に作る必要はありません。“今から1年かけて、少しずつ形にしていくための地図”として読んでみてください。



目次



  1. 2026年法改正で何が変わるのか(中小企業向けざっくり整理)

  2. 「場当たり対応」から「仕組み」への発想転換

  3. ハラスメント・カスハラ対策の体制づくり7ステップ

  4. 中小企業ならではの工夫と「やりすぎない」設計

  5. 社内外に「ちゃんと取り組んでいる」と伝わる見せ方



1. 2026年法改正で何が変わるのか(中小企業向けざっくり整理)


まずは、2026年前後の法改正で何が変わるのかを、経営者目線でざっくり押さえておきましょう。



(1)カスタマーハラスメント対策が「義務」に


これまで、パワハラ・セクハラ・マタハラ・育児介護ハラスメントについては、



  • 事業主が雇用管理上必要な措置を講じること(方針、相談窓口、研修など)が義務


とされてきました。


今回の法改正では、ここにカスタマーハラスメント(顧客・取引先等からの著しい迷惑行為)が加わります。


イメージとしては、



  • 「パワハラ防止義務」とほぼ同じレベルで、カスハラについても会社としての体制整備が求められる


という形です。



(2)いつまでに何をすべきか


改正法は2025年6月に公布され、公布からおおむね1年半以内に施行される予定とされています(一部は2026年4月1日施行予定)。


実務的には、



  • 2026年中には「カスハラを含むハラスメント対策の体制」が整っている状態を目指す


と考えておくと分かりやすいでしょう。


「施行日ギリギリに慌てて書類だけ整える」のではなく、



  • 2025年~2026年前半:方針・ルール・対応フローを作る

  • 2026年前半~後半:現場への浸透と運用の見直し


という2段階で考えるのがおすすめです。



(3)中小企業に求められる基本ライン


細かな内容は政府の指針やマニュアルで示されますが、すでに公開されている資料から見えている「基本ライン」は次のようなものです。



  • ハラスメント全般・カスハラについての会社方針を明文化し、社員に周知すること

  • 相談窓口や対応体制を整えること(専任部署でなくてもよいが、誰がどう対応するかを決める)

  • 相談があったときに、事実確認・一時対応・再発防止までの流れを持っていること

  • プライバシー保護や相談者への不利益取扱いを禁止し、周知していること

  • 研修やミーティング等で、社員に繰り返し周知・啓発していること


これらを、「紙の上だけ」でなく「日々の運用」で回していくことが、Day4のテーマです。



2. 「場当たり対応」から「仕組み」への発想転換


多くの中小企業でよく見られるのが、



  • 問題が起きる → その都度、社長や担当者が個別に対応する


という「場当たり型」のやり方です。


もちろん、個別の事情に応じた対応そのものは大切です。しかし、それだけでは次のようなリスクがあります。



  • 担当者が変わると対応方針がバラバラになる

  • 社員が「どこまで守ってもらえるのか」が分からず、不安になる

  • 外部から見たときに、「会社として何もしていない」と評価されてしまう


ここで必要なのが、


「個別対応」+「共通ルール(仕組み)」の両輪で回すという発想です。


仕組みといっても、分厚いマニュアルを作る必要はありません。


中小企業であれば、



  • A4数枚の方針・ルール・フロー

  • シンプルな相談記録シート

  • 年に1回の振り返りミーティング


といったレベルから十分にスタートできます。



3. ハラスメント・カスハラ対策の体制づくり7ステップ


ここからは、具体的なステップに落とし込んでいきます。



ステップ1:経営トップとしての方針を「一枚の紙」に落とす


最初の一歩は、社長・役員としての「方針」を短く言語化することです。


例えば、次のような内容をA4一枚にまとめます。



  • 当社は、パワハラ・セクハラ・マタハラ・育児介護ハラスメント・カスタマーハラスメントを認めない

  • 従業員が安心して相談できる環境を整える

  • 顧客・取引先からの行き過ぎた要求に対しては、会社として従業員を守る

  • 相談したことや協力したことを理由に、不利益な扱いは行わない


ポイントは、



  • 法律用語を並べるのではなく、「社長の言葉」で書く

  • 長すぎず、読めばすぐに意図が伝わるボリュームにする


この「社長の一枚紙」が、後の就業規則やマニュアルの“芯”になります。



ステップ2:現状の棚卸し(リスクマップづくり)


次に、現在の状態をざっくり棚卸しします。


以下のような表を作って、チェックしてみてください。



  • 就業規則にハラスメント・カスハラに関する条文があるか

  • 相談窓口は誰か、社員はそれを知っているか

  • 過去1~2年で、ハラスメントやクレーム対応に関する相談はあったか

  • 顧客対応の現場(店舗・コールセンターなど)で、負担が集中している部署はどこか

  • すでにやっている取り組み(研修・ミーティング・張り紙など)は何か


この棚卸しをそのまま「簡易リスクマップ」として使い、



  • 今すぐ着手すべきところ

  • 半年以内に手を付けるところ

  • 来年度の課題に回してよいところ


を三段階に分けておくと、無理のない計画が立てやすくなります。



ステップ3:規程・マニュアルの「骨格」を整える


次に、就業規則や社内規程、マニュアルの見直しです。


最低限、次の3つの「骨格」を押さえておきましょう。



  • ①NG行為の例示
    パワハラ・セクハラ・マタハラ・育児介護ハラスメント・カスハラについて、「会社としてNGと考える具体例」を短く記載します。

  • ②相談窓口と対応フロー
    誰に相談できるのか、相談を受けた人はどう動くのか(上司・社長・外部専門家へのエスカレーションなど)を簡単なフロー図にします。

  • ③懲戒・是正措置の考え方
    重大なハラスメントがあった場合の懲戒の可能性と、その際の手続き(事実確認・本人の弁明の機会など)について、基本方針を示します。


ここでは、「一気に完璧を目指さない」ことがポイントです。


まずは既存のパンフレットや公的資料を参考にしつつ、自社の規模に合わせたシンプルな形からスタートし、毎年少しずつブラッシュアップしていくイメージで構いません。



ステップ4:相談窓口と「動くフロー」を決める


窓口は、形だけ作っても機能しません。次の3点を具体的に決めておきましょう。



  1. 誰が窓口になるのか
    人事担当者、役員、外部の相談窓口など。小規模企業であれば、社長+総務担当の二本立てにするケースもあります。

  2. どの経路で相談できるのか
    口頭・メール・チャット・紙の相談フォームなど。少なくとも1つは「上司を通さなくても相談できるルート」を用意します。

  3. 相談を受けた後の動き方
    “聞きっぱなし”にならないように、「事実確認 → 一時対応 → 対応方針の決定 → 本人への説明 → 再発防止」の流れを、A4一枚のフロー図にしておきます。


フローは、壁に貼れる程度のシンプルさで十分です。「何かあったら、この矢印どおりに動けばよい」と現場がイメージできることが大事です。



ステップ5:研修・ミーティングで「現場言葉」に落とす


ルールやフローを作ったら、必ず「口頭で共有する場」を作ることが重要です。


中小企業向けのやり方としては、次のような方法があります。



  • 全社員ミーティングや朝礼の中で、社長から方針を直接説明する

  • 管理職向けの短時間勉強会(1時間程度)を行い、よくあるケースを題材にディスカッションする

  • 顧客対応が多い部署では、カスハラ事例をもとにロールプレイをしてみる


ここで大切なのは、



  • 「ハラスメントはダメです」と言うだけで終わらせない

  • 「困ったときはこうしていい」「ここまで来たら会社が前に出る」と具体的に伝える


という点です。


社員が「どこまで自分で対応し、どこから会社に任せていいのか」をイメージできるようにすることで、相談のハードルが下がります。



ステップ6:記録と振り返り(年1回のミニ監査)


運用面で差がつくのが、「記録」と「振り返り」です。


相談や事案があったときには、



  • いつ・誰から・どんな内容の相談があったか

  • 会社としてどのような対応をしたか

  • 結果として、状況はどうなったか


を、簡単でよいので残しておきます(個人が特定されない形での整理でも構いません)。


そして、年に1回程度、経営会議や管理職会議の中で、



  • この一年でどんな相談・事案があったか

  • どこに時間や負担が集中していたか

  • 規程やフローで変えた方がよい点はどこか


を振り返ります。


これを「ミニ監査」のような位置づけにすることで、対策が“やりっぱなし”にならず、毎年少しずつ良くなっていく流れを作れます。



ステップ7:外部専門家・公的資料を「味方」につける


最後のステップは、社外資源をうまく使うことです。


中小企業が自前で全てを作り込むのは現実的ではありません。例えば、次のような支援先があります。



  • 社会保険労務士・弁護士などの専門家(顧問契約の有無にかかわらず、スポット相談が可能な場合も多い)

  • 厚生労働省や自治体が出しているパンフレット・マニュアル・モデル規程

  • 業界団体が作成したカスハラ対応マニュアル


これらの資料をベースにしながら、



  • 自社の実情に合う部分を抜き出して使う

  • どうしても判断が難しい案件は、早めに専門家に相談する


という形をとることで、「法律に沿いつつ、現場にも合う」ラインを探りやすくなります。



4. 中小企業ならではの工夫と「やりすぎない」設計


ここまで読むと、


「やることが多すぎて、結局進まなそうだ…」


と感じたかもしれません。


そこで、中小企業ならではの工夫として、次の3つを意識してみてください。



(1)「書類よりも会話」を重視する


大企業のように分厚いマニュアルを作るのではなく、



  • A4一枚の方針

  • A4一枚の相談フロー

  • 年1回の全社ミーティング


といったシンプルなセットに絞ることで、「読まれない規程」になりにくくなります。



(2)「全部自前」ではなく「8割は公的資料」を活用する


用語の定義や法律の整理などは、公的なパンフレットやマニュアルに任せてしまって構いません。


自社でカスタマイズすべきなのは、



  • 会社としての方針(社長の言葉)

  • 実際に起きそうな事例・ケーススタディ

  • 相談ルートや対応フロー


といった、「自社だからこそ意味がある部分」です。



(3)「一気に100点」ではなく「毎年10点ずつ上げる」


ハラスメント対策もカスハラ対策も、一度作って終わりではありません


むしろ、



  • 1年目:最低限の規程とフローを整える

  • 2年目:実際の運用を踏まえて、現場とのギャップを埋める

  • 3年目:研修や評価制度とも連動させていく


というように、「少しずつ良くしていく」発想の方が、中小企業にはフィットします。



5. 社内外に「ちゃんと取り組んでいる」と伝わる見せ方


最後に、せっかく取り組むのであれば、



  • 従業員にとって「安心材料」になる

  • 採用や取引先に対しても「安心感」を与えられる


形にしておきたいところです。



(1)社内への見せ方



  • 社内掲示板やイントラネットに、「ハラスメント・カスハラ防止方針」と「相談窓口」を掲示する

  • 入社時オリエンテーション資料に、ハラスメント対策のページを1枚追加する

  • 評価面談や1on1の中で、「困っていることはないか」を定期的に聞く


こうした小さな積み重ねが、「いざというときに相談していいんだ」と思ってもらう土台になります。



(2)社外への見せ方



  • 会社のWebサイトに、「ハラスメント防止への取り組み」の一文を掲載する

  • 採用ページで、「従業員を守るための取り組み」として簡単に紹介する

  • 取引先向けの資料に、「不当要求には応じない」方針をさりげなく記載する


もちろん、書いてある内容と実態が乖離していては意味がありませんが、「ちゃんと考えている会社」であることを伝えることは、採用・定着・取引の面でもプラスに働きます。



まとめ・要点


この記事のポイントを整理します。



  • 2026年中に施行予定の法改正により、カスタマーハラスメント対策も、パワハラと同様に「事業主の義務」として位置づけられる見通しである。

  • 求められるのは、「場当たり的な対応」ではなく、方針・相談窓口・フロー・教育・記録といった要素を備えた「仕組み」としての体制づくりである。

  • 体制づくりは、①方針の言語化 → ②現状棚卸し → ③規程・マニュアル整備 → ④相談窓口とフロー → ⑤研修・ミーティング → ⑥記録と振り返り → ⑦外部専門家の活用、という7ステップで進めると整理しやすい。

  • 中小企業では、「書類より会話」「公的資料の活用」「毎年少しずつ改善」というスタンスが現実的であり、無理なく運用しやすい。

  • 社内外に「きちんと取り組んでいる」ことを見せることで、従業員の安心感や採用・取引先からの信頼にもつながる。


※本記事は一般的な情報提供であり、個別の事情についての法的アドバイスではありません。具体的な対応については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。



よくある質問(FAQ)



Q1. 法律が完全に施行されるのを待ってから動いても間に合いますか?


A. 正直なところ、施行直前から準備を始めると、「書類だけ整えて運用はこれから」という状態になりがちです。


まずは、



  • 方針の一枚紙を作る

  • 相談窓口と簡易フローを決める

  • 社内ミーティングで共有する


といったところから、できる部分だけでも前倒しで始めておくと、施行時点での負担が大きく減ります。



Q2. 従業員が少ないので、窓口担当者を分けるのが難しいです。


A. 小規模な会社では、「社内窓口+社外窓口」の組み合わせにする方法があります。


例えば、



  • 社内では社長または役員が窓口を兼ねる

  • 顧問社労士や外部相談窓口を「第三者窓口」として案内する


といった形です。


ポイントは、「上司に言いづらいときの逃げ道」をひとつ用意しておくことです。



Q3. カスハラ対策を強化すると、お客様が減ってしまわないか心配です。


A. 多くの企業の例を見ると、「不当な要求には応じない」という姿勢を明確にすることで、むしろ従業員のモチベーションやサービス品質が上がり、結果的に顧客満足度が向上したケースも少なくありません。


大切なのは、



  • 正当なクレームには真摯に対応する

  • 明らかに行き過ぎた要求には、会社として線を引く


というバランスを、社内で共有しておくことです。従業員が安心して働ける環境は、長期的には顧客にとってもプラスになります。






記事・相談担当者:井浪(いなみ):Amazon/Kindle 著者ページ


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