2025年の年末調整で慌てないための通勤手当チェックリスト|非課税限度額引上げへの実務対応
「年末調整までに何をするか」を具体的に整理する回
2. はじめに
Day1では、「何が変わるのか」「誰に影響があるのか」といった全体像を整理しました。
Day2では、いよいよ
「じゃあ、年末調整までに何をどう進めればいいのか?」
という 具体的な動き方 に落とし込んでいきます。
忙しい年末の経理業務のなかで、通勤手当だけに時間を割くのは現実的ではありません。
そこでこの記事では、やるべきことを 5つのステップ に分けて、
- どの社員が対象か
- どのくらい税金を取りすぎている可能性があるか
- 年末調整でどう処理するか
- 退職者や中途入社者がいる場合の注意点
などを、順番に確認していきます。
3. 目次
- ステップ1:対象となる従業員を洗い出す
- ステップ2:改正前後の非課税限度額を使って差額をシミュレーションする
- ステップ3:年末調整での処理の流れを押さえる
- ステップ4:給与ソフト・源泉徴収票での実務ポイント
- ステップ5:従業員への説明とトラブル防止のポイント
- 今後に向けた通勤手当ルール・給与規程の見直しヒント
4. 本文
4-1. ステップ1:対象となる従業員を洗い出す
まずは、Day1でも触れた「影響が出そうな社員」を具体的にリスト化します。
チェック項目
- マイカー・バイク・自転車で通勤しているか
- 片道距離は何kmか(通勤届や交通費申請書を確認)
- 2025年に支給した通勤手当(月ごと)の金額
- 2025年4月1日以後に支払われるべき通勤手当(本来の支給日)かどうか
この時点では、
「非課税限度額を超えていそうな人」「ギリギリの人」をざっくりマーキング
しておけば十分です。
4-2. ステップ2:改正前後の非課税限度額を使って差額をシミュレーションする
次に、該当しそうな従業員について、
- 旧・非課税限度額を使ったとき
- 新・非課税限度額を使ったとき
で、どれくらい課税対象額が変わるか を確認します。
片道距離ごとの「新しい非課税限度額」の表を使い、各従業員の支給額に当てはめていきます。
例:片道25km、月額通勤手当 20,000円の社員
- 旧限度額:18,700円
- 新限度額:19,700円
1か月あたりの違い
- 旧ルール
非課税:18,700円
課税:1,300円
- 新ルール
非課税:19,700円
課税:300円
→ 1か月あたり 1,000円分、課税される金額が少なくなる イメージです。
この「課税額の差分 × 税率(源泉徴収税率)」が、年末調整で還付される可能性がある税額になります。
実務的には、
- 給与ソフトが自動対応してくれるか
- Excelなどで別計算して、年末調整時に手作業で調整するか
を早めに確認しておくと安心です。
4-3. ステップ3:年末調整での処理の流れを押さえる
通勤手当の非課税限度額が引き上げられましたが、4月1日以後に支払われるべき通勤手当のうち、
11月19日までに支払われたものについては、その都度遡って再計算するのではなく、年末調整時にまとめて精算するという扱いになっています。
流れをシンプルにまとめると、次のとおりです。
- 2025年に支払った給与・通勤手当をもとに、いったん通常どおりの年末調整計算を行う
- 対象となる従業員について、改正後の非課税限度額を適用した場合の金額で再計算する
- 旧計算と新計算の差額(過納税額)を、年末調整で還付する
- 源泉徴収簿・源泉徴収票の記載を、国税庁の示す方法にしたがって整理する
特に注意したいのは、次の2パターンです。
年の途中で退職した人・死亡した人がいる場合
改正前の限度額を超えていた場合、改正後の限度額で再計算し、源泉徴収票の訂正や再交付が必要になるケースがあります。
中途入社で年末調整の対象にならない人
会社では年末調整を行わないため、社員本人が確定申告で調整することになります。
その場合でも、会社としては源泉徴収票を正しい情報で交付することが重要です。
4-4. ステップ4:給与ソフト・源泉徴収票での実務ポイント
国税庁のQ&Aでは、年末調整の際の実務について、次のようなポイントが示されています。
- 新たに非課税となった金額やその計算根拠は、本来は源泉徴収簿の余白に記載する形が想定されている
- しかし、給与ソフトの仕様上そのような記載ができなくても、正しい年調税額が算出されていれば問題ない
- 源泉徴収票の「支払金額」欄は、非課税となる通勤手当を除いた金額を記載する
- 中途退職者などで、既に源泉徴収票を交付している場合、状況によっては
「支払金額欄を訂正」「摘要欄に『再交付』と記載した源泉徴収票を交付する」必要がある
実務では、
- 給与ソフトベンダーの案内(ヘルプページやマニュアル)を確認
- システムで自動処理する部分と、会社側の判断・手作業が必要な部分を切り分け
- 退職者・中途入社者・休職者など「少しイレギュラーな人」のリストアップ
をしておくと、年末調整の作業がかなりスムーズになります。
4-5. ステップ5:従業員への説明とトラブル防止のポイント
今回の改正は、「税金が増える」話ではなく、むしろ一部の人にとっては還付が増える可能性のある話です。
とはいえ、
- 「通勤手当のルールが変わる」と聞くと不安になる
- 手当額が変わらないのに、給与明細上の「所得税額」だけが変化する
といったことで、従業員から問い合わせが来ることも想定されます。
そこで、社内向けには次のような説明を用意しておくと安心です。
- 今回の改正は「マイカー・自転車通勤者の非課税枠が広がる」趣旨であること
- 2025年分の年末調整の際に、まとめて調整するため、月ごとの給与明細では変化が見えにくい場合があること
- 場合によっては、退職者を含めて源泉徴収票を再交付することがあること
難しい専門用語を避け、
「会社として、法律に沿ってきちんと還付・精算を行います」
というメッセージを繰り返し伝えるだけでも、不信感の予防になります。
4-6. 今後に向けた通勤手当ルール・給与規程の見直しヒント
今回の改正をきっかけに、通勤手当の支給ルールそのものを見直す会社も出てくると思います。
検討のヒントとしては、次のような観点があります。
支給方法
- 「定額支給」か「距離に応じた支給」か
- 在宅勤務・リモートワークが増えているなら、通勤回数に応じた支給に変えるかどうか
支給タイミング
- 「前月分を翌月に払う」のか「当月分を当月に払う」のか
- 今回のように「いつ支払われるべきか」が税務上のポイントになるケースがあるため、規程を明文化しておく
社内手続き
- 通勤距離変更・引っ越し・通勤手段変更時の届出ルール
- マイカー通勤の安全・保険のチェック(労務安全の観点)
税務と労務の両面を踏まえて、一度社労士・税理士とも相談しながら整えると、今後の法改正にも対応しやすくなります。
5. まとめ
- まず、マイカー・自転車通勤者のうち、旧限度額を超えていそうな人を洗い出すことが出発点です。
- そのうえで、改正前後の非課税限度額を使って差額をシミュレーションし、年末調整で精算する金額を把握します。
- 年末調整では、4月1日以後に支払われるべき通勤手当について、新しい非課税限度額を適用した場合の過納税額をまとめて精算する扱いです。
- 給与ソフトで「新たに非課税となった金額」の欄がなくても、正しい年調税額が出ていれば問題ないとされています。
- 退職者・中途入社者・死亡者がいる場合など、イレギュラーなパターンでは源泉徴収票の再交付などが必要になることもあるため、早めにリストアップしておくと安心です。
6. FAQ(3問)
Q1. 今回の改正で、すべての対象社員が「必ず還付になる」のでしょうか?
A. いいえ、旧限度額の範囲内でしか通勤手当を支給していない場合は、改正後の限度額を使っても課税額が変わらず、還付は発生しません。
還付が出るのは、「旧限度額を少し超えていたが、新限度額の範囲内に収まる」ようなケースです。
Q2. 中途退職者についても、会社が年末調整や再計算をしなければなりませんか?
A. 中途退職者については、すでに支払った通勤手当が旧限度額を超えていた場合、改正後の限度額で再計算し、必要に応じて源泉徴収票を訂正して再交付することが求められています。
年末調整を行わない場合でも、正しい金額の源泉徴収票を交付することが重要です。
Q3. 2026年以降も、この非課税限度額は同じと考えてよいですか?
A. 今回の改正は、2025年の人事院勧告やマイカー通勤手当の見直しを受けたものですが、将来的にも状況によって見直される可能性はあります。
現時点では、2025年4月1日以後に支払われるべき通勤手当から新限度額が適用されると示されていますが、今後の改正があれば国税庁などからアナウンスされます。
毎年の情報確認を習慣にされることをおすすめします。









