ブログ2025.10.18
契約と見積りの再設計:価格転嫁を“仕組み化”する
はじめに
Day1では全体像を俯瞰しました。
Day2は、契約と見積りの“再設計”にフォーカスします。
ポイントは3つ——
1) 契約書に「変更方法」を法定記載、2) 契約前に「おそれ情報」を通知、3) 発生時は誠実協議で変更を決める。
この3点をテンプレ化+証拠化し、誰がやってもブレない仕組みに落とします。
目次
改正要点の再確認:契約・見積りに何が追加?
- 契約書の法定記載事項が追加:請負契約書に「価格等の変動または変更に基づく工事内容の変更または請負代金の変更、および算定方法」の定めを必ず記載。
- 通知ルールの新設(いわゆる「おそれ情報」):請負代金・工期に影響し得る事象を契約前に、必要情報とともに受注者から通知。事象が実際に発生した後は、注文者に誠実協議の努力義務(公共は義務)。
価格転嫁を止めない「3ステップ運用」
Step1|契約前:おそれ情報の通知
主要資材の急騰見通し、サプライ制約、為替急変、災害影響など(通知対象は施行規則で定義)。事実にもとづく統計・報道・業者通知などを付す。
Step2|契約書:変更方法を法定記載
「変更額は協議して定める」等の条文イメージが例示されており、「変更しない/認めない」型の文言はNG。
Step3|発生時:誠実協議で変更
事象発生→受注者が契約変更を申出→注文者は誠実に協議(テーブルに着き、可否理由を説明すること等)。正当理由なく開始拒否・引き延ばし等は「誠実でない」例として明示。
工期面では、公共発注は協議に応ずる義務、民間は努力義務の整理。
契約条項テンプレ(変更方法)
※自社の実態・約款との整合を確認のうえご活用ください(例)
第○条(請負代金の変更方法)
- 材料価格等に著しい変動が生じたとき、受注者は請負代金の変更を請求できる。
- 変更額は、当該変動の内容その他の事情を考慮し、協議して定める。
- 協議の際、受注者は統計・市場資料・仕入通知等を提示する。
「おそれ情報」通知テンプレと根拠資料の集め方
メール件名例:【通知】主要資材の価格変動見通し(契約締結前の重要情報)
本文要点:
- 影響見込み:請負代金(材料費・労務費・共通仮設 等)/工期
- 根拠資料:
- 公共工事設計労務単価:全国全職種平均で前年度比+6.0%(R7/3適用)。
- 資材価格指数/資材動向:建設資材価格指数(月次)、主要資材動向レポート等(第三者機関の定例統計)。
- 連絡先・協議希望日程
通知根拠として、客観性ある統計・報道・仕入先発表等を裏付けに使うことが推奨されます。
誠実協議の運び方(現場で揉めない段取り)
- 協議開始の合意記録(日時・参加者・議題)→根拠資料の共有→変更額の算定ロジック(指標×出来高 等)→合意・不合意事項の明確化。
- 「誠実に応じていない」と評価される典型(正当理由なき開始拒否/意図的な遅延/一方的打切り)は明記されているため、社内教育で周知。
見積書の中身:労務費と「労務費の基準」(今後)
- 見積内訳の明確化(材料費・労務費・必要経費)を求める流れが強化。
- 2024改正に伴い、中央建設業審議会が「労務費の基準」を作成・勧告できる枠組みが整備。著しく低い労務費等での見積り・見積り変更依頼の禁止が制度化の方向。実務は早期に人件費の“見える化”へ。
証憑・監査に強いドキュメント運用
- テンプレ群の標準装備:①おそれ情報メール雛形、②変更方法条項、③協議議事録、④変更契約書式。
- 保管:電子で時系列に紐づけ(見積→通知→契約→協議→変更契約→精算)。
- 監査対応:契約書の法定記載事項の抜け漏れ点検、標準約款準拠の確認(建設業法令遵守ガイドライン)。
まとめ
- 契約書には必ず「変更方法」を記載。おそれ情報は契約前通知→発生後に誠実協議が新常態。
- 根拠資料は第三者の統計・指数を活用(例:設計労務単価+6.0%)。証拠性が協議を前に進める。
- 労務費の扱いは可視化が必須。審議が進む「労務費の基準」を前提に、自社の見積ロジックを早期に標準化。
FAQ(3問)
Q1. 「おそれ情報」は何をどこまで書けば十分ですか?
請負代金・工期に影響し得る事象を、客観資料(統計・報道・仕入通知 等)付きで契約前に通知します。事象例や運用は施行規則・資料に整理があります。
Q2. 「変更方法」条項は“協議して定める”でよい?
例示でも協議して定める趣旨が示されています。一方で「変更しない/認めない」趣旨は違反リスク。自社約款・標準約款との整合を必ず確認してください。
Q3. 公共と民間で、誠実協議の強さは違いますか?
公共は協議義務、民間は努力義務と整理されています(工期関連の基準も参照)。









